ナンシー・アサートン『ディミティおばさま幽霊屋敷に行く』

「優しい幽霊シリーズ」の5作目、気持ちよく手慣れた感じですすんでいくストーリーが気持ちよい。前作4作品で語られているように、イギリスはコッツウォールドで双子の男の子を産んで育てるようになったシカゴ育ちのロリ。毎日双子の世話に追われて慌ただしく暮らしているところへ恩師から電話があり、ノーサンバーランドの古い屋敷にある古書の鑑定に行くように頼まれる。夫のビルが留守番はまかせておけと言ったので出かけるが、もう少しというところで山道から車ごと落ちるところを必死で飛び降りる。気を失ったロリを近くに住む作家アダムが助ける。ロリとアダムの間になんともいえない空気がただよう。おいおいロリ、あんたにはビルがいるでしょうが、と言いたくなる(笑)。

ノーサンバーランドはイングランドとスコットランドの戦場だったそうで、数世紀にわたって奪い合われた土地だという。いまも古い城や屋敷があり開発が進んでいないところ。メル・ギブソンの「ブレイブハート」のような戦いが繰り広げられた場所なのだろう。いまは相手が違うけれどイギリス軍が不審者が侵入しないように見張っている。担当のマニング大尉がロリを屋敷に送りこの土地について話してくれた。

お屋敷に着くと風変わりな主人と妻の若い美女ニコールが迎える。幽霊が出そうな部屋に案内されるが、実際に幽霊が出てくるのである。主人は用事があるので1週間は帰らないと出て行く。ロリはニコールと執事夫妻と広大な屋敷に残され、図書室で本を調べ始める。ニコールは孤独でロリがいることを喜ぶ。

ロリは古い絵本を見つけて惹きつけられる。昔ここで暮らしていたニコールの大叔母にあたる少女クレアのものだった。そしてクレアにはエドワードという恋人がいたこともわかっていく。
古い部屋から絵本やドールハウスやテディベアや人形が出てくるところは、「抱擁」で古い屋敷で探し物をするシーンを思い出させてくれた。
(朝月千晶訳 RHブックス+プラス 820円+税)