レジナルド・ヒル『午前零時のフーガ』

本を読み終わって感想を書くのが習慣になっているが、前作の「死は万病を癒す薬」は読み出したこと、読んでいての連想で〈貧しい親戚〉のことを書いただけで本の感想を書いていない。いっぱい書くことがありすぎて書けないといおうか。おもしろく引っ張られて最後までいってしまう。読み終わったのに実はストーリーを把握できていないみたいな。いやストーリーはわかっているけど、あれよあれよという感じでいってしまうので、書こうと思うとまた読み返さなくてはいけない。名人芸に翻弄されている快感というようなものかな。また読み直したら書くことにしよう。

「午前零時のフーガ」は「死は万病を癒す薬」のあとを受けて、重体で入院した病院から退院し復職したダルジールが、まだけだるさを残しつつ出勤しようとする。この日は遅刻しないようにと慌てて出かけるが、電話がかかり留守電に話すのは昔の友人だった。そのまま車を出すとあとをつけている車がある。そのうちダルジールは今日は日曜日だと気がつく。ダルジールは教会に入って大聖堂で頭を垂れる。あとをつけてきたジーナはその姿を眺めている。ジーナは留守電にかけてきたダルジールの旧友で首都警察の警視長のバーディーと結婚の約束をしている。彼女は7年前に警官の夫が失踪したままになっているのを今回きちんとしようと思っている。

ダルジールとジーナはホテルのテラスで話し合うが、ダルジールはその前にノヴェロ刑事を呼び出して、自分たちを見張るように伝える。ノヴェロ以外にも二人を見張っていた者がおり、ノヴェロはそれを追って重傷を負う。ダルジールはジーナの部屋で疲れて横になってすぐに爆睡してしまう大失態。
パスコー主任警部は知り合いの娘の洗礼式に立ち会っていたが、ノヴェロの事件で呼び出される。ダルジールには連絡がとれずいらつく。

ジーナを追いかけている悪党たちの生まれから現在の姿、元は大悪党だがいまは実業家のキッドマンと政治家になったその息子、そして満点の秘書。警官たちと悪党たちの過去と現在が入り交じる。

過去と現在が入り交じり、未来へとつながっていく物語。ダルジール警視とパスコー主任警部とウィールド部長刑事の三位一体の3大スターが相変わらずの軽口と信頼で活躍。読み終わったら次の作品はいつ読めるかしらともう待ち望む。
(松下祥子訳 ハヤカワポケットミステリ 1800円+税)