ナンシー・アサートン『ディミティおばさま旅に出る』

「優しい幽霊シリーズ」の2作目。ロリは子どものころから大好きな国イギリスを思わせるボストンの一角にアパートが借りられて、それほどいやではない仕事があればいいなと願っていた。そしていやでたまらないというほどでない男性と安定した生活をもつこと。そんな思いがディミティおばさまが亡くなって、一生食べていけるお金とイギリスの家を遺してくれて可能になった。その上にビルという白馬の王子と出会い結婚もした。
おとぎばなしのような恋で結ばれるとあとでトラブルが起こるものだと実感したのは、ビルの仕事ぶりを知らなかったからだ。クライアントのほとんどがボストンの旧家で訴訟好き、彼らのためにビルは働きづめである。偉大な父親を持っているため、自分をその後継者にふさわしい人物であると証明しなければならないという強迫観念もあるようだ。イギリスから移住してきた祖先への忠誠心もあり、そして父親の負担を軽減しようともしている。

ロリはかつての上司のフィンダーマン博士の助手として働く。予算が切り詰められているためイギリスへの出張はロリが自己負担で手伝っている。
ロリは天涯孤独の身だが、ビルにはボストンに父とことごとにロリをいびる叔母たちがいて、イギリスには元々のウィリス家があっていとこたちがいる。
崖っぷちに立たされた気分のロリは二回目のハネムーンを計画しイギリスへ行くことにするが、ビルには仕事が発生し、義父の大ウィリスがいっしょに行くことになる。

イギリスで義父がいなくなり、ノートを開いてディミティおばさまと会話する。ノートにおばさまの言葉が現れて相談にのってくれる。義父を追うつもりのロリに前回登場した親友のエマ夫妻と相談していると夫妻の娘ネルがいっしょに行くという。ロリのだいじなウサギのぬいぐるみレジナルドがどうやら義父といっしょに行ってしまったらしい。
ロリはネルとテディベアのバーティーとともに追跡の旅に出る。
イギリス好きの人にはたまらない、コッツウォルズからはじまりイングランドをあちこちする追跡劇。最後はもちろんハッピーエンド。
(鎌田三平・朝月千晶訳 ランダムハウス講談社文庫 840円+税)