うちの花子が廊下のゴミ箱に捨てられていたのは36年前の早春。小さい子でジャケットの胸の中に入れたり肩に乗せたりして仕事場に通った。それからおしゃれな籐のバスケットを買ってきて入れて歩いた。少し大きくなるとバスケットに入るのをいやがって逃げるのでつかまえるのにナンギしたっけ。バスケットは友だちが捨て猫を拾ったときに彼女にあげた。
大きくなるのが早かった。胸に抱いて靭公園に散歩に行ったら、道行く人たちがカワイイといってくれた。すぐに大きいなるよともいわれた。
女の子と思い込んで「花子」と名付けたら、友だちが見て「見てみ、こいつ男やで」とのことだったけど、花子のままでええやんかと死ぬまで花子だった。
アカトラで耳の内側や手のひらがピンクで愛らしい子だった。だけど捨てられたときに苦労したせいか人に馴染まず、誰か来ると机の下に隠れる。長くなると流しの下、押入れの奥とゆっくりできる隠れ場所を持っていた。
いろんなおもちゃを買ってやった。クマのぬいぐるみが大好きでこっちが留守のときはソファでひっついて寝ていたようだ。クマは女の子でピンクの服を着て白いエプロンをしていた。
わたしの声が好きで声を出して本を読んでやるとじっと聞いていた。最後の日もアリソン・アトリーの『グレイ・ラビットのおはなし』を読んでやったらじっと聞いていた。
最近はツイッターでいろんな猫さんたちを毎日見せていただいている。花子がいまいたら「今日の花子」の写真を毎日アップしているでしょう。