「ラジオのように」はいまも甘美

先日、突然、コ ム ラ ジ オーと歌声が聞こえて、なつかしいなあとしばし聞き惚れていた。久しぶりにCDかけたんだ。
この曲を最初に聞いたのは50年近く昔のこと、友人カップルを訪ねて東京へ行き、新宿やら明大前やらのジャズ喫茶に連れて行ってもらった。彼らの部屋にはレコードと本がたくさんあり、わたしらより数歩前を進んでいるのがわかった。そのときに聞かされたレコードがブリジット・フォンテーヌの「ラジオのように」だった。甘くて知的なブリジットとアレスキの声にアート・アンサンブル・オブ・シカゴの演奏が加わる。甘美な音に酔ってしまった。

大阪にもどってすぐにLPコーナーに行って輸入レコードを買った。当時のLPコーナーは東京のレコード店より早く輸入レコードが入荷するのが自慢の店だった。ちょっと前から行きつけになっていてフリージャズのレコードをたくさん買った。

そのころは泉北の団地に住んでいて、広くはないが明るく、遠方の友だちをよく泊めたものだ。西成区から移り住んで3年間、いつも誰かが来てレコード聞いたりしゃべったりで賑やかだった。
いまは亡きジャズ喫茶マントヒヒのマスターもよく泊まりに来てた。東北出身なので近所の山菜を教えてくれた。秋にはアケビを採った。
その雰囲気にぴったりなのが「ラジオのように」だったといま思う。時を超えて甘い気分になっている。