川端康成『舞姫』

お正月読書は気分を変えて川端康成の「舞姫」を何十年ぶりに。「舞姫」は昭和25年12月から26年3月まで朝日新聞に連載された。こどものときから新聞小説に目を通していたわたしだが、なんぼなんでも覚えているはずなく、きっと姉がのちに単行本を買ったのを読んだのだろう。それにしても40代の夫婦の性生活がわかるはずもなく、主人公のバレエに生きる波子と品子の母娘が波子の夫矢木に精神的に虐待される物語として読んでいた。

いま読み終わって、川端康成はすごいと改めて思っている。
第二次大戦前、波子はお嬢様育ちで矢木は波子の家庭教師だった。矢木は学者を目指していて、波子はバレエで名をなしはじめていた。娘の品子と息子の高男が生まれていまや娘はもう二十歳。真面目な相手だと親のいいなりに結婚したのだが、矢木は実は計算高く、波子名義の預金を黙って自分名義に書き換えている。それを発見したのが父親を尊敬していた高男で、彼は自分の留学費用を黙って引き出す。
波子の恋人竹原はかつて波子の家の離れを借りて住んでいたことがあり、家庭を持っているが波子をずっと想い続けてきた。竹原が波子のために調べてみると家や土地も矢木名義になっているのがわかる。

母娘がバレリーナということで、東京にある稽古場と鎌倉の自宅の稽古場では洋楽のレコードがなり響き、当時のバレエの舞台を見に行く場面も多い。そのころの日本はバレエブームだったらしい。すごい数のバレエ教室があるとマネエジャアの沼田が波子の奮起を促す場面があった。