新劇ファンだったころ

おととい北堀江のコーヒー店でもらってきた『文学座通信』は、毎月1日に東京新宿区の文学座から発行されている。わたしが新劇から遠ざかって何十年経つだろうか。

芥川比呂志のハムレットを国民会館で見た記憶が蘇る。のちにサンケイホールで仲代達矢のハムレットを見てどっちが好きか悩んだっけ。仲代のほうはポスターを手にいれて天井に貼って「寝ながら見るねん」と騒いでた。芥川のほうは幕間にハムレット姿のまま立っているのを見て心が騒いだ。

中学生のとき下の姉と上の兄が新劇ファンだったからたまに連れて行ってもらえた。劇団民芸の『炎の人ーヴァン・ゴッホの生涯』は、滝沢修のゴッホを見たくて騒いでいたので兄が連れて行ってくれた。ただし発売日に並んで入場券を買ってこいとの仰せで大阪駅のプレイガイドに行って並んで買ってきた。舞台に興奮して長いこと我が家は滝沢修の物真似で賑わっていた。
文学座は杉村春子が長いこと中心になっていた。『女の一生』の杉村春子の姿やセリフはいまも忘れていない。そういう役と『シラノ・ド・ベルジュラック』の主人公の若く美しい女性ロクサーヌにも引き込まれた。シラノのセリフをそらでいえるのがジマンだったっけ。

そのころは新劇というものがあって、文学座、俳優座、劇団民芸の3劇団が中心だった。大阪勤労者演劇協会というのに入って会費を払うと毎月1回新劇の公演を見られる。友達がそこの事務員だったので、入り口に立っている横でしゃべっていることがあった。『アンネの日記』のとき、アンネ役の美少女が前を首をあげて通っていった。愛想の良い人もおり女優さんにもいろいろいるのがわかった。
労演は毎月会報を出していて、見た芝居の感想を載せていた。何回か紙面が余ったとき感想を書かされた。ロルカの『ベルナルダ・アルバの家」の感想がうまく書けたといまも思い出す。