パトリシア・ハイスミス『死者と踊るリプリー』

へんなタイトルなので原題を見たら『Ripley Under Water』なので納得した。前作『アメリカの友人』と同じ家で妻のエロイーズと安穏に暮らしているリプリーに思いがけない危機がやってくる。
同じ村の大きな池がある家を買って暮らし始めた若いアメリカ人のブリッチャード夫婦がトムに接近してくる。経営大学院で学んでいると言ったがその他のことも嘘くさい。なにをたくらんでいるかわからない。家にいるトムの姿を近くの森の中から撮影していたりする。

エロイーズと友人のノエルとトムは前から計画していた北アフリカへ旅する。ホテルの側でブリッチャードが立っているのをトムは見かけた。誘い出すように一人で出かけたトムはつけてきたブリッチャードを叩きのめす。
女二人連れであとの旅を楽しむように言ってトムは先に帰国しブリッチャードのことを調べる。『贋作』のときの画家のこととかが思い浮かぶ。
どうやらこの作品は『贋作』の続編になるのだとわかってきた。そのときの友エドとの深い友情というのか関わりがいい感じ。
まるでゲームでもしているように、詰めたりかわしたり、一手先んじたり、ブリッチャードをかわしながら危うい橋を渡っていく。
ブリッチャードは人を雇って川をさらいはじめて村人の噂になるが、どうやら思っていた物を手に入れたらしい。
最後、ほっとした(笑)。
(佐宗鈴夫訳 河出文庫 980円+税)