この話はいままで夫以外に話したことがなかったが、前の話の流れで書いておこうと思う。
戦時中はいろんな人のお腹に回虫が住んでいたんじゃないかな。都会でもいるだろうが、田舎の生活だといやでも共生することになる。こやしとしてまいた糞便から回虫の卵が畑の野菜にくっつき、生で食べる漬物にくっついてお腹に入る。
学校では「虫下し」を飲むようにいわれたが、叔母さんにはいわなかった。当時は「なにごとも我慢する」がわたしの信条であった。
ある日、夏だったか冬だったか覚えてないが、便所で座っているとお腹の中がおかしなことになっている。下痢ともなんともわからずに踏ん張った。もてる力を出し切ったら、お尻から白い紐状のものが垂れ下がっている。どうするべ、と考える間もなくその紐を新聞紙でつかんで引っ張った。ずるりと白い紐は垂れ下がり、ぽかっと出きって下の便壺へ落ちて中へもぐっていった。
「あーあ」と安堵の一呼吸をしてパンツを上げ便所から出た。なんといわれるかわからないので、叔母にはいわず。学校でもいわないままいまに至る。
気持ち悪い話だけど、ずるずると出てきて、最後にすぽっと抜けたのが気持ち良かった。
ウィキペディアに回虫の写真があった。そのとおりだった。いまは平静に眺められる。