今年のうちわ

我が家はクーラーよりも扇風機よりもうちわをよく使う。窓から入る自然の風がいちばん好きだが、真夏になればその風はなくなるから「暑い、暑い」といいながらうちわでばたばたあおぐ。
うちわで間に合わなくなり扇風機の風が生ぬるくなればクーラーをつけるが、少しぐらいは我慢する。特にわたしは「暑い暑い」といいながらうちわを使うのが好きである。足元のクーラー冷えが怖いし。

この前までうちわは毎年どこかからもらうものだった。こどものときはお米屋さんや酒屋さんのうちわが家のあちこちに置いてあるというか放り出してあったものだ。それらを拾って片隅にまとめるのがわたしの仕事だった。晩ご飯がすむと家の外に縁台を出して座り、うちわで足元をばたばたあおいで、父親の子供の頃の浅草のことや映画『駅馬車』『暗黒街の顔役』の話を聞く。空には星がきらきら光っていた。天の川は見えたかどうか忘れたが見えたような気がする。

うちには去年までいろんなうちわがあった。天神祭のや友達にもらった地方の由緒ある神社のや、郵便局でもらった朝顔柄や、文房具屋さんで買った猫ものなど。使うときにちらりと絵の面を見るのがくせになっていた。それを去年の夏の終わりに「来年は新しいのを買おう」といってまとめて捨ててしまった。先日なにげなく「うちわ出そ」と探して捨てたのを思い出した。

スーパーライフで去年売っていたのを思い出して聞いたら、今年は扱っていないとのこと。そういや去年の夏の終わりに売れ残っていたっけ。
昨日ハンズなら絶対あるでと行ったら、毎年夏になるとうちわと扇子と風鈴が派手に置いてあった場所に他の商品が並んでいる。
他の階で買い物して店員さんに聞いたら1階だけにあるというので探してようやく見つけた。普通のうちわより小型で豆絞りのような柄が色違いで2種類あった。柄が1本の竹で先の方が細く分かれている凝ったもの。1本750円と少し高いがあっただけでありがたい。大切に使おう。