イアン・ランキン『監視対象』(2)

マルコム・フォックスはロジアン・ボーダーズ州警察職業倫理班(PSU)に所属する警官である。別れた妻に暴力をふるってから禁酒するように彼女に言われ、それ以来一滴も飲んでいない。エジンバラの一軒家で一人暮らしをしている。介護施設にいる父と恋人と暮らしている妹がいる。
妹の恋人のヴィンスが撲殺された。妹はその前に怪我をしてギブスをはめていて階段から落ちたのが原因と言っている。だれもそれを信じていなくてヴィンスのDVのせいだと思っている。そしてフォックスが妹の敵討ちをしてヴィンスを殺したと疑われる。

フォックスはヒートン刑事の汚職を調べて立件までいったとき、新しく児童搾取およびオンライン保護部のアニー・イングリスから捜査に協力するよう依頼される。児童ポルノのオンライン取引をしていると疑いがあるジェイミー・ブレックの内密調査である。ところがブレックはヴィンスの事件の担当していてフォックスを調べる立場なのである。
最初はお互いに調べる立場、ヴィンスの件ではブレックが押す立場だが、フォックスは「子供を見るのが趣味とはな、ブレック巡査部長、私が吊るし上げてやる」と思うのであった。
二人は捜査中にヒートンを擁護する者たちに後をつけられ、証処をでっち上げられ、二人もろとも停職になる。

フォックスとブレックはだんだんと相手を信頼するようになる。お互いの得意なところを活かし、腐敗した警官たちにせまる。まっすぐなフォックスと柔軟なブレック。
フォックスは「何者かがきみを小児愛者に仕立て上げようとしたんだぞ」と息まくが、ブレックは冷静になぜこんなことになったか解明することだと答える。
後半は二人がいっしょに捜査にあたる場面が多くて、二人がユーモアを交えて理解しあっていくところが楽しい。停職中なのだが給料は出るとあってホッとした(笑)。
(熊谷千寿訳 新潮文庫 1100円+税)