夏目漱石『道草』

昨夜から読み出したらおもしろくて手放せない。結局さっきまで読んでいて読了。
キンドルを買ってから青空文庫の夏目漱石を読むようになった。パソコンの画面で読むよりも文庫本感覚で読めるからかな。
何十年間も漱石を読むということは、全集でなく文庫本で「明暗」「虞美人草」「三四郎」と「草枕」を読むということだった。特に「草枕」は持ち歩いて読んでいる。好みが固まったままなので、これはいかんと先日久しぶりに「行人」を読んだ。二郎の苦悩、一郎の苦悩、いる場所を失い投げやりにならざるを得ない嫂。近代恋愛小説だった。

「道草」は夫と妻の物語である。漱石夫妻の姿を自ら描いた私小説。
健三は3年間のイギリス留学から帰ってきた。ある日かつての養父 島田と道ですれ違い、間違いなく彼だと確信する。間もなく島田がやってきた。顔つきや着るものの描写がすごくリアルでディケンズのよう。それから金を貸せと頼まれ迫られる物語がはじまる。元養父母、そして間に立ってやってくる人たち、実姉、実兄、尾羽打ち枯らした妻の父親。金のなる木とばかり、たかる、たかる。
長編小説の最後のほうで、順番は「彼岸過迄」「行人」「こゝろ」「道草」「明暗」。