クリント・イーストウッド監督・主演『グラン・トリノ』感想続き

昨日書き忘れていた。コワルスキー(クリント・イーストウッド)の飼い犬がよかった。主人と同じように老犬で主人のことをよくわかっている。これから出かけようというとき、浴槽でタバコをくわえた主人をなじるものだから、一度だけ吸わせてくれよとコワルスキーが頼む。それから着替えて最後の大仕事をしに出かけるのだが、その前に犬を連れて隣家のモン族のおばあさんに託す。犬はコワルスキーと今生の別れと理解して淋しく横たわる。
コワルスキーは大仕事を決行する前に、床屋で散髪してひげもあたってもらった。洋服屋では生まれて初めて服を誂えた(わたしは後で自分の葬式に着る服だと気がついた)。

コワルスキーは一見差別主義者のようだがそうではない。自分はポーランド系、床屋の主人にはイタ公と呼んでぼろくそ、タオの仕事先に紹介したのはアイリッシュ系が経営する小さな工場。まだいたけど忘れた。
だからモン族の一家のことをぼろくそ言ってても、パーティーに呼ばれるととけ込む。タオの人間を見抜いて教えるし助ける。

サラ・パレツキーの作品で毎度おなじみの老人、ミスタ・コントレーラスを思い出した。工場労働者出身の頑固一徹な老人。コワルスキーは息子夫婦に独居をやめて施設に入るように勧められる。ミスタ・コントレーラスは娘に同居を勧められる。ふたりとも頑として応じず。
そこで妄想、クリント・イーストウッドにミスタ・コントレーラスをやってもらってニコール・キッドマンにヴィクことV・I・ウォーショースキーをやってもらったらええやろな。