ジーン・ポーター『そばかすの少年』

リンジー・フェイの「ゴッサムの神々 上下」を読んでいたら息が詰まってきたので、ちょっとゆるめようと「そばかすの少年」を引っ張り出した。「ゴッサム」はニューヨークの警察制度が発足した1845年を書いている。当時のニューヨークにはじゃがいも飢饉などによるアイルランドからの移民がたくさんいて悲惨な目に遭っていた。子どもたちが売春させられ殺されるところを読んでいたらちょっとひと休みしたくなった。

それで読みたくなったのが「そばかす」。アイルランドからアメリカ・シカゴへ恋人を追って行った貴族の子息が苦労した末に死に、火事で妻も亡くなり、怪我をして遺された息子は名前もわからぬまま孤児院で育つ。火事で右腕を失ったので養子の口もない。学校に紹介された家で虐待され家出して職を探す。
リンバロストの森の木材会社になんでもするからと支配人に頼むと、森の番人の仕事を与えられる。名前はと聞かれて「そばかす」と言うと、スコットランド人の支配人はマックリーンと自分の名前を彼に与えて名簿に記す。
リンバロストの深い森と沼地には立派な木材になる木がたくさんあり、マックリーン支配人は有刺鉄線で自分の広大な土地を囲っているが、泥棒が狙っている。毎日そこを歩いて見廻るのがそばかすの仕事になり、彼は誠心誠意働き、森の植物と動物について体で学ぶ。マックリーンにはそばかすが日ごとにわが子のように思えてくる。

森に研究のためにやってきた「鳥のおばさん」と呼ばれている女性学者といっしょに来た少女エンゼルとの交流はそばかすに生き甲斐を与えた。エンゼルを熱愛するが、身分違いのために苦しむ。
最後はエンゼルが奮闘して、アイルランドから甥を捜しにきた貴族を見つける。めでたし、めでたし。

その後、「そばかす」は「オ・モーア」となり、ジーン・ポーターの次の作品「リンバロストの少女」では、主人公の少女エルノラが困ったときに助けを求めると快く引き受ける。妻のエンゼルとの間に子どもが4人でもっと産むとエンゼルは言っている。
ともにリンバロストの森の魅力がいっぱいで楽しく、わたしが10歳ごろから愛読している少女小説。そのとき読んだ本はなくして児童図書館でコピーをとってもらったが、20数年前に文庫本が出ているのを発見した。
(村岡花子訳 角川文庫マイディア・ストーリー)