『エデンより彼方に』をいま見てよかった

昨夜『エデンより彼方に』を見てすぐに感想を書いた。いつものことだが、あとで読んだらストーリーを書くことばかりに気を使い、自分の感想が不足しているのに気がついた。今夜は同じトッド・ヘインズ監督のボブ・ディランを描いた映画『アイム・ノット・ゼア』(ケイト・ブランシェットがディラン役!)を見たのだが、こちらはもう一度見てから感想を書くことにして、今日は昨日の続き。

Sさんがこの映画のことを教えてくれたときに見ていたらどうだったろう。いまのような気持ちでは見ていなかったような気がする。
Sさんはその後自分が夢中だった秋月こおの作品『富士見2丁目シリーズ』を教えてくれた。愛し合う二人の若い音楽家(指揮者とバイオリニスト)の音楽への精進と愛の生活が描かれたシリーズ。これがわたしのBLへの目覚めだった。10巻くらいは買っていたと思う。毎度同じようなものだが、音楽への愛と知識も勉強になったし、ベッドシーンもなかなか素敵で、ロマンチック大好きなわたしは連載されていた『小説ジュネ』も毎号買うことになった。
最近はたまにハーレクインぽいのを訳者さんにいただいて読んでいる。どっちかというと、西洋ものが好きだ。だから『エデンより彼方に』も『キャロル』も大好き。

もともとプルースト、ジャン・ジュネ、ジャン・コクトーに心酔していたから素質はあったんだけど、『富士見2丁目シリーズ』で目が覚めたのはほんとで、『キャロル』に続き『エデンより彼方に』をいま見てほんとによかった。

トッド・ヘインズ監督『エデンより彼方に』

この映画が上映されたときから見たいと思っていた。ずっと忘れていたが最近は『キャロル』の監督ということもあって話題になっている。今夜はようやく見ることができすっきりした。
2002年製作だから14年前になるのか。そのころ仲良くしていたS嬢がすごくよかったと電話で言ってた上にオススメのメールや手紙をくれた。うんうんと空返事をしていたわたしはそのときなにを考えていたんだろう。ヨーロッパ映画をレーザーディスクで見ていた時代が過ぎて、映画はもうお腹いっぱいになっていたような気がする。
今夜『エデンより彼方に』を見て、あのときの彼女の心境を思いやった。激しい恋をしていた。

繁榮する50年代のアメリカ、コネティカット州ハートフォードの上流階級の主婦キャシー(ジュリアン・ムーア)は仕事人間の夫フランク(デニス・クエイド)と2人の子供がいて、できぱきと黒人のメイドを使って家事をこなし、広い庭には黒人の庭師が働いている。
ある夜、警察から「酒に酔ってトラブルを起こしたから保護している」と電話があり、キャシーは身柄を引き受けに行く。これが家庭崩壊の始まりだった。
フランクは仕事人間で昼食はランチミーティング、夜も会議中になにか食べるという忙しさだが、ある日帰る途中で映画館に立ち寄る。そのあとバーに入るがその店はひとりで来ている男性ばかりである。

キャシーは残業が続くフランクに夜の弁当を届けに会社に行く。夫のオフィスのドアを開けたら、夫が男と抱き合っているのを見てしまう。
キャシーの考えで病気のせいだろうと、フランクとともに医者に行くことにした。
フランクにはいらつく日々。ついに会社から休暇命令がきて、1カ月休みになりキャシーの考えでバカンスに出かける。

キャシーは黒人の庭師レイモンド(デニス・ヘイスバート)と心を通わせる。レイモンドと話すときは夫と話すときより楽しい。美術館で会って絵の話をして知的好奇心を満たすが、それが黒人と付き合っているとスキャンダルになる。

夫と別れることになり、レイモンドはキャシーとの件が引き金となってこの街で暮らせなくなり去っていく。一人で生きる決意をするキャシー。レイモンドが乗った汽車が去っていく。ホームで見送るキャシーの顔には希望がある。

ジュリアン・ムーアの髪型と衣装が素敵だった。

バルバラ『ナントに雨が降る』

今日は一日中雨だった。やんだかと思うと降って一日中、さっきまで。春の雨が街路樹の新緑の葉っぱを濡らしていていい感じ。いまのところ、大阪は穏やかだ。

「雨が降る」ってシャンソンがあるなあと思い出して検索したら「ナントに雨が降る」が出てきた。昔LPレコードを持っていたのを思い出した。バルバラ好きだったなあ。歌が自然に口に出てきた。うんとセンチメンタルに歌ってみる。

2年くらい前に反原発の人たちのお話会が心斎橋のカフェであった。たまたま日本に戻ってきたフランス在住の女性がナントに住んでいると自己紹介されたので、「ナントに雨が降るですね」と言ったらご存知なかった。1時間くらい後で「思い出した、銅像が建っている人ね」と言われた。ほんまかなと思ったが「そうでしょうね」と答えておいた。この歌でナントという地名が世界中に(?)広まったのだから銅像が建っても不思議でないかも。
せっかく思い出したのだから久しぶりにYouTubeで聞くとしよう。

『キャロル』熱がさめない

ツイッターを読んでいると『キャロル』への愛を伝えているひとによく出会う。そのひとのツイートをさかのぼって読んでいくと、また読みたくなるだろうとフォローする。そこからまたキャロルファンに出会うってわけで、『キャロル』関連のツイートは楽しい。にこにこしながら読むから精神にもいいみたい(笑)。

わたしは映画もよかったが、パトリシア・ハイスミスの小説のほうが好きかな。でも日本語字幕付きDVDが発売されたらすぐに買うつもりだ。
映画館での上映は延々と続いているようだ。どれだけ『キャロル』が日本の女性たちに愛されているかわかる。これだけ上質な恋愛映画はめったにないもんね。

さっき「キャロラー会」のお誘いツイートにぶつかった。場所は大阪だって!!
「キャロル、テレーズそしてケイトさまやルーニーちゃんについて語り合いたい方、どなたで参加をお待ちしています♩」とある。行きたいような場違いなような(笑)。
一応そのツイートをリツイートして彼女とフォローしあった。

ケニー・オルテガ監督『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』

プリンスの訃報にたくさんの悼む言葉が寄せられたのをツイッターで読んだ。そしたら2009年に亡くなったマイケル・ジャクソンを思い出した。わたしは二人ともに名前以外にはほとんど知らないという不届き者である。

『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』(2009)は公開当時とても話題になっていた。わたしですらムーンウォークという言葉は知っていたくらいに。2010年にはテレビ放映もされている。

今夜はじめて見てマイケル・ジャクソンの凄さを実感した。滑らかなステップ、柔らかい声、バックを率いる統率力、常にみんなの中心にいる。世界最前線のエンターテイメントである。彼を中心に、音楽、振り付け、衣装、装置が決まっていく。
その中でも白黒の画面になったシカゴがテーマの舞台が素敵だった。ハンフリー・ボガードみたいな私立探偵かギャングか粋な男が銃をかまえる。リタ・ヘイワースみたいな美女がまとわりついてくる。
それとホラーシーンが特に楽しかった。さすがとしか言いようがない。

最高のアーティストでありエンターテイメントという言葉の意味がよくわかった。

トム・クルーズ主演/キャメロン・クロウ監督・脚本『ザ・エージェント』

姉の家から帰ると相方が炊事していたんだけど、大クシャミとハナミズの洪水。昨日の夜遊びで風邪を引いたんやなと思ったのだが、風邪よりも花粉症の症状のようだ。お昼の天気予報で「今日の花粉は特別多い」と言ってたし、わたしがひどい花粉症になったときの症状に似ている。

それなら映画でも見て呑気に過ごそう、トム・クルーズの笑顔で癒されようと『ザ・エージェント』(1996)を選んだ。

ジェリー(トム・クルーズ)はエージェント事務所の腕利きの社員だったが、突然仕事の思想性に目覚めて独立する。一緒にやろうとオフィスで呼びかけたが全員無言。その中で経理事務のドロシー(レネー・ゼルウィガー)だけがジェリーの考えに賛成して一緒に退社する。いままでジェリーが担当してきたスポーツマンたちは会社側について、彼のクライアントはアメリカンフットボールのロッド(キューバ・グッディン・ジュニア)一人になってしまう。ロッドはまだ世間に知られていない選手だ。
ジェリーの奮闘とドロシーの純情。ドロシーの息子が可愛くて達者で楽しい。保父がジェリーにジャズのテープを渡したのがおかしい。細部までこだわりがある。
ロッドが最後に大試合で頑張りスターになる。ジェリーの努力が報われた。

トム・クルーズ大好き。最近は見てないけど『トップガン』からずっと見続けてきた。『レジェンド/光と闇の伝説』はレーザーディスクを買った。『カクテル』の笑顔が好き。『遥かなる大地へ』のアイルランドの若者がよかった。『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』は美しすぎ。『アイズ ワイド シャット』好き。

原作ケン・ブルーエン/ウィリアム・モナハン監督・脚本『ロンドン・ブルバード -LAST BODYGUARD-』

なにか映画を見たいなと調べていたら、原作ケン・ブルーエン『ロンドン・ブルバード』にひっかかった。覚えている名前はケン・ブルーウンで『酔いどれに悪人なし』『酔いどれ故郷に帰る』(ハヤカワ文庫)を持っている。アイルランドのノワール作家、どの作品にも哀愁があふれていて好きだ。

監督・脚本はウィリアム・モナハンで2010年初監督作品。
主演のボディガードにコリン・ファレル、はじめて見たけどアイルランド出身の好男子。ヒロインがキーラ・ナイトレイ、その他役に当てはまった俳優たちがギャングや裏街道をいく男たちを演じている。
音楽もよし、タイトルの文字もよしで気持ちよくスタート。

傷害罪で3年服役して帰ってきたミッチェルが出所するシーンからはじまる。迎えにきたのはかつての仲間ビリーだった。ミッチェルはヤクザ稼業に戻る気がなく誘いを断る。ちょっとしたきっかけで得た仕事は引退した女優シャーロットのボディガード。有能なミッチェルをギャングの親分が目をつけて引き入れようとする。
相手に先んじてやっつけるミッチェルだから安心して最後までいった。ミッチェルは清潔感があってインテリで喧嘩が強い。コリン・ファレルが気分良く演じていて素敵。でもそこまで完璧にやっての結末が悲しすぎ。

『美術手帖』4月号「メンズ・ヌード」を買って読んでいる

これもツイッター情報なんだけど、『美術手帖』4月号「メンズ・ヌード」がおもしろそう。先日から買おうと思っていたが、ようやく今日姉のところに行くのでイカリスーパーで買い物してから紀伊国屋へまわった。重い食料品の紙袋と布袋を提げてご苦労様なことである。『ユリイカ』はあったけど『美術手帖』が見当たらぬ。店員さんに聞いたら一発でそこと教えてくれた。なんとまあ『美術手帖』はビニールで包装してありけっこうな冊数が平積みしてあった。
文庫本も買いたかったが荷物が重くなるので、見るだけでもと書棚の前に立っていたら、じっとわたしを見つめている中年の女性がいる。おばはんがエロ雑誌を持っていると思われたなと一瞬思ったが、なんのなんの万引きと思われたみたいだ。けげんな表情をしたわたしの純真な顔を見て彼女は向こうへ行ってしまった。まあ、これはわたしの感想であって事実かどうかは知らん。

帰ってビニール包装を破って出した雑誌は表紙からメンズ・ヌードで期待が高まる。ページをめくるときれいで上品な写真。文章はすっきりきっちり。
読みたかったのは湯山玲子さん×金田淳子さんの対談「目差される男のハダカ」である。わたしは10年くらい前に湯山さんの音楽関係の本を1冊読んだことがある。その本で地中海にあるイビサという島のクラブのことを知った。最近午前のNHKラジオで湯山さんの声を聞きどんな方かと想像していた。はじめて写真を拝見して堂々たるお姿とお言葉にしびれた。まだざっとしか読んでないのでこれからゆっくり読む。

バリー・レヴィンソン監督 ロバート・レッドフォード主演『ナチュラル』

映画館で見てその後はレーザーディスクで何度でも見ている大好きな映画(1984)を久しぶりに見た。天才野球選手ロイ・ハブス(ロバート・レッドフォード)は故郷の恋人アイリス(グレン・クローズ)に別れを告げてプロ野球選手を目指して列車で出発する。途中で30分の列車停止中にロイがボールを打つのをじっと見ていた黒衣の女(バーバラ・ハーシー)がいた。シカゴのホテルで女は自室へロイを誘いピストルで撃つ。そして自殺。そこで人生が狂ったロイの苦労がはじまった。野球から離れなかったロイは15年後にスカウトに認められ大リーグに入団する。なかなか機会が与えれないが練習を続ける。
ついに強打者ぶりが認められチームの中心選手になる。監督の姪メモ(キム・ベイシンガー)は球団オーナーたちと組んで色気で八百長に引っ張り込もうとする。
シカゴの球場にアイリスが現れてカフェで再会する。アイリスは息子と都会で暮しているが、故郷の農場は手放していないという。

アイリスはロイの最期の打席前に、息子はあなたの子だと書いたメモを届ける。奮い起つロイ!!
最後は逆転サヨナラ3ランホームラン!!
そして農場で息子とキャッチボールするシーンで物語は終わり。

ヘンリー・ハサウェイ監督 スティーブ・マックィーンの『ネバダ・スミス』

タイトルだけはずっと知っていたけどどんな映画か全然知らなかった1966年製作の異色の西部劇。スティーブ・マックィーンは『シンシナティ・キッド』が大好きで、これは映画館で見た後にテレビでやると何度も見ている。

白人の父と先住民の母との間に生まれて逞しく育った16歳のマックス・サンド(スティーブ・マックィーン)が水汲みをしているところへ来た3人のならず者。彼らは近くの金鉱の金を父親が持っていると思い込んでおどし、金がないとわかると二人をなぶり殺した。マックスは怒りに燃えて家を焼き払い敵討ちに出発する。
見かけた3人を犯人と思って近づいたのだが人違いで、親切にしてもらって気を許したら寝ている間に馬も銃も奪われる。次に出会ったのは拳銃専門の商人で、若者を捨てておけないと思ったらしく拳銃の使い方を教えてくれ、世の中の仕組みも教えてくれた。別れにもらったお金で桃の缶詰と英語の本を買ったマックスはカウボーイをしながら仇を探す。

捕まって牢屋へ入ったり脱獄したりと大変続きだが、神父(ラフ・ヴァローネ)に助けられ体を癒す。神父も両親と兄弟を殺され一人生き残った人だった。聖書を与えられるがなかなか信じらないマックス。
でも最後には手強い3人を執念でやっつけて爽やかに去っていく。

神父役のラフ・ヴァローネは名作『にがい米』(ジュゼッペ・デ・サンティス監督)に出ていたイタリアの俳優。懐かしかった。もっと好きなのはヴィットリオ・ガスマンだったが。