レジナルド・ヒル『子供の悪戯』を買ったのは25年前

古い本の整理を続けている。読みたい本はほとんど買うから増えるばかりで置いておく場所は増えないから積み重なるばかりである。先日の大阪北部地震のときに本棚から本が溢れて、また本の始末をしなければと思った。阪神大震災のときは壁に沿った本棚からふとんの上に本が飛んできたので怖くなって、もう全集は買わないと決意した。買っても目が悪くなったし時間がないし読めないもんね。

今日はレジナルド・ヒルの本が並んでいる本箱を見ていたら『子供の悪戯』があった。なんと扉のタイトルの下にサインが入っている。オシャレな文字だ。あれっと思い出したのは、京都まで講演会に行って、そこで買った本にサインをもらったこと。握手もしてもらった。そして帰りの京阪電車で読み始めたっけ。
書店が主催したイギリスの3人の実力派作家を呼んだ講演会+サイン会だった。実はわたしは3人とも読んだことがなかった。わたしのミステリ好きは父親ゆずりの古い作家と自分が開拓したアメリカのハードボイルドに限られていたから、そのころはイギリスの警察物にはめちゃくちゃ弱かった。でもこれから手を出そうと思っていたのではるばる京都三条まで行ったのだ。
質問時間にパスコー警部の妻エリーが好きという女性の発言があり、エリーを知らないわたしは嫉妬でめらめら(笑)。帰りにロビーでサインをもらうときはなんでも知ってるファン顔してた、ははは。
『子供の悪戯』の三版は1993年に出ているから、講演会はこの年のことだったろう。25年も前だったんだ。

2012年1月にレジナルド・ヒルさんはお亡くなりになったが、大好きなダルジール警視、パスコー警部、ウィールド刑事が活躍する姿が本を開けば蘇る。(秋津知子訳 ハヤカワポケットミステリ 1300円)

アニー・デュプレーの本『黒いヴェール』

ツイッターでアニー・デュプレーという名前をちらりと目にしたとき、あれっと思った。この人のこと知ってるはず。フランスの女優らしいからきっとそうだと勝手に決めた。検索したらジャン・リュック・ゴダール監督の『彼女について私が知っている二、三の事柄』 (1966)、アラン・レネ監督の『薔薇のスタビスキー』 (1973)に出ている。どっちの監督の作品もよく見ているほうだが、この2本は見ていない。『女性たち』 (1969)なんかブリジッド・バルドーとモーリス・ロネだが日本未公開である。全然思い違いしていたと気がついた。

子供の頃に見たフランス映画を思い出してみようとしたが思い出せない。10歳年上の二番目の姉が映画好きでよく連れて行ってくれた。ボーイフレンドと行くための親への目くらましに使われたみたいだが、わたしひとりで映画館に入るには3年くらいの間があったから、ありがたかった。映画を見ること、映画雑誌を見ることを教えてもらって、その上に映画を見たらストーリーをしゃべることも教えてもらった。映画と同時に歌舞伎と文楽と新派と新劇を見におしゃれして出かけることも教わった。ただし姉がおしゃれするだけでわたしは相変わらずみじめったらしかったが。あんたも大人になったらわたしみたいにできるといわれました(笑)。ボーイフレンドには近所の子といってました(笑)。

さて、アニー・デュプレーは思っていた人と全然違った。アニーは間違いないと思うんだけど。『黒いヴェール』は美しい写真の入った本でずっしり重い。最近は本を捨てるのに専念しているから、地震対策にも重い本はいらない。でも重くても美しい写真がたくさん入っているから本棚に並べよう。
(北代美和子訳 リュシアン・ルグラ写真 文藝春秋 1996刊)

マイク・デイヴィス『スラムの惑星』の扉に圧倒された。外は歴史的大雨

ラジオのニュースをかけて食事している。今夜は歴史的大雨のニュースが中心だ。各地に想像を絶するような雨が降ると野村アナウンサーが告げている。今夜はときどきラジオをかけつつネットニュースにも気配りしようといいながら晩ご飯を食べた。片付けも早めにちゃっちゃっとやった。

先日からアマゾンで何冊か本を買って読むつもりでいるが、雨に圧倒されて集中できそうにない。在庫本を開いてお気に入りのところを読んでいる。まあ、これも楽しいのだが。

今日届いたマイク・デイヴィス『スラムの惑星』(明石書店)は数年前に図書館で借りて読んだことがあるが、今回「酒井隆史 監訳」というところに思い入れがあり買うことにした。開いて驚いた。いきなり扉に1行「都市は発展して、スラム、半スラム、超スラムになってしまった」(パトリック・ゲデス)とある。圧倒された1行。

池波正太郎『剣客商売 番外編 ないしょ ないしょ』

『剣客商売』シリーズ最後の1冊を読み終わった。まだ買ってなくてどうしようかと思っていた「ないしょ ないしょ」をつるかめさんが貸してくださって読了できた。
今回は「黒白」の重苦しいほどの剣の達人物語と違って、お福という優しくしっかりした女性の仇討ち物語を含んだ半生記である。
最初の雇い主に強姦されて、仕返しに朝の味噌汁にねずみのフンを刻んで入れたお福。雇い主はそれを知ったが笑ってすませた。

雇い主が惨殺され、働く場所をなくしたお福は下男の五平といっしょに江戸へ出て女中奉公の口を見つける。
年老いた雇い主が早朝の庭で毎朝練習している手裏剣投げを見ていて投げさせてもらう。お福には投げる才能があったようで、練習に精を出し手裏剣が思うところに投げられるようになった。雇い主が亡くなったあとも練習に精を出す。手裏剣は腰で投げる。

お福は誠実に働きながら殺された元の主人の仇を探し出し、秋山小兵衛の助けを借りて仇に向かう。お福の手裏剣は仇の目と背中に刺さった。小兵衛は女は人殺しをしてはいけないと、自らが仇の腕や足に刀をふるい、殺さずに御用聞きの弥七らに細引き縄を打たせる。

小兵衛さんと医者の小川宗哲先生が出てきてお福に優しくしてくれるところでにっこり。肩を張るところがなく暖かい気分で読めた。

池波正太郎『剣客商売 番外編 黒白』を読み終わった

もう1ヶ月になるが『剣客商売』をまとめて友だちにもらってもらった。名残惜しくてつい読み返したのがいけなかった。最初から読んで、読み終えてから結局3回持って行ったのだが、目は疲れる肩は凝るでおおいに疲れた。その上に別冊の「黒白」がすごくいいと聞いたので買ったら分厚い上下。ちょっと読み出したらきりがない。秋山小兵衛の若き日というより壮年期を描いており、妻のお貞との結婚生活、息子の大治郎が育っていく姿がとてもいい。

「黒白」はただ秋山家の物語というだけでなく、もう一人の主人公、波切八郎の物語でもある。八郎は小兵衛とどっちかというほどのすごい剣術つかいである。木剣で立ち会って小兵衛が勝った。それ以来八郎は真剣で勝負したいと思い続けて試合を申し込む。小兵衛は応じてその日に待っていたが八郎は現れなかった。武士の義理を捨ててしまった八郎は暗殺者の道を歩むようになる。女性に触ったこともなく剣の道に勤しんでいた彼に寄ってきたお信に惚れ込んでしまう。謎の女お信への純愛につい波切さんを応援してしまった。

一方、小兵衛はお貞と死に別れ、次の女には逃げられて、最後はおなじみの「おはる」と長く暮らすことになる。
いろいろあったお信と八郎が結ばれて幸せそうな最後のシーンがうれしい。
武士道と恋愛とが縦横に描かれた時代小説。楽しんだ。

本がお酒にかわった

昨日も書いた池波正太郎『剣客商売』だが、今日残った数冊を持っていった。うちはこれでおしまいだけど、引き取る方はこれから。持って行ったらすぐに読んでいるそうだから、もう数日の楽しみかな。とはいえ一回読み終わっても、少ししたらまた読みたくなるはず。当分楽しめると保証する。3年経ったらもう一度読んで楽しむ(笑)。

本のお礼に日本酒「慶紋東長」をもらった。佐賀のお酒で見るからにうまそう。
うちはこういうことは手早いので、早速冷やして晩の一杯にと酒の肴を買いに行った。かつおのたたきに、にんにくと玉ねぎとねぎを刻んだ薬味で。酒と肴がよくあった初夏のご馳走。いやあ、うまい酒だった。肴もうまかった。秋山小兵衛の気持ちになって、もういっぱい、なんて。
もうちょっと残してあるから明日の楽しみとして、お酒の後はきつねうどんでお腹いっぱい。

池波正太郎『剣客商売 番外編 黒白』を読み出した

いま忙しいのでもっと先にしようと思っていたのだが辛抱できずに読み出した。
当ブログに『剣客商売』文庫本16冊を近所の友人に進呈することにしたと書いたら、池波ファンの友人が自分たち母子は「黒白」が好きだとメールをくれた。「kumikoさんはどれが好きですか」と聞かれて慌てて調べたら「黒白」は別冊で、わたしは読んだことがなかった。また慌てて『剣客商売』本編のほうをかなり読み進めた時点で「黒白」をアマゾンに注文した。届いたのを1週間ほど枕元に置いておいたがついに今日読み出したというわけ。
ところで、本編のほうで好きなのはどれかの返事をしてなかった。ゆっくり考えよう。

「黒白」の最初のところで秋山小兵衛と試合をする予定の剣客が出てきたが、まだ小兵衛は出てこぬ。まだ10ページぐらいしか読んでないからしょうがないね。どうやら若き日というか働き盛りの小兵衛が出てくるようだ。友だち母子が一番良いというのだから楽しみに読み進めよう。

暑かったり寒かったりで疲れる

今日は朝からからだがしんどかった。パソコン前でももひとつピリッとしない。こんなときはと『剣客商売』を読んでみたが、秋山小兵衛が老いを感じて心境を述懐していたりで、これまたしんどい。最後にばったばったと賊を切り倒して小兵衛側が勝つところを読んでもしんどい日はしんどい(笑)。

先日関東在住のUさんが『剣客商売』シリーズで自分たち(本人とお母さん)が好きなのは『黒白』だと教えてくれた。わたしが読んでいるのは新装版の文庫16冊で、友人に進呈することに決めている。いまは名残の読書中なのである。えらいこっちゃ、『黒白 上下 番外編』読んでないやん。それですぐにアマゾンに注文したのが今日届いた。分厚いが文字が大きくて読みやすそう。ここまできたんやからゆっくり読もう。

昨日の暑さから今日の涼しさ。この気候の変化でしんどいのかな。昨日は半袖Tシャツだった。今日はその上に薄手のセーターを着ている。寝るときは薄手のふとんを掛けているがこの数日は汗をかいていた。夏布団に替えようかと思っていたが、今夜は寒いからまだ替えられない。どうなってんねんの5月。

ダニー・ボイル監督『T2 トレインスポッティング』とイアン・ランキン

2017年製作のイギリス映画。1996年製作の『トレインスポッティング』から20年ぶりの続編ということで期待して見始めたんだけど、前作での印象的な画面以外はほとんど忘れていて、のめりこめなかった。
『トレインスポッティング』を見たのも封切りからかなり後になってからで、友人の男子が騒いでいたから促されて見たようなわけで。でも見たらとても面白かった。それで期待はしてたんだけど。もう一度前作を見てから気持ちの準備をして見たらよかったかもしれない。
今日はとりあえず、見たというだけ。

エディンバラの高地というか丘というか、木々の緑と空の色がよかった。
久しぶりにイアン・ランキン描くエディンバラを思い出した。ジョン・リーバス警部とシボーン・クラーク部長刑事。エディンバラの上品ではない地域で働く警官たちの物語だが、映画に出てくる壊れそうな住宅に彼らが出入りする姿が目に浮かんだ。

池波正太郎『剣客商売 十巻 春の嵐』

第1巻は持ってなくて2巻から16巻まであるのを友人に譲ることにしたのだが、名残惜しくてつい読んでしまう。読み方が荒っぽいけど何度も読んだ本だから懐かしくなるような名残り惜しいような気分である。
最初から読みだして短編はそんなに未練が起こらなかったが、昨日読みだした「春の嵐」は長編小説である。力の入った作品で昨夜はほとんど徹夜で読んでいた。ただし明け方から昼ごろまでまた寝たけど(笑)。

江戸時代の話で主人公の父と子、秋山小兵衛と秋山大治郎と二人を取り囲む人たちの武勇と人情の物語である。情けないことに、わたしは日本歴史に弱い。田沼意次は悪人だとなんとなく思い込んでいた。この作品で田沼が先見の明をもった政治家であると知った。ああ恥ずかしい。それで日本史を勉強しようと思ったこともあったのにそのままでいまにいたっている。
いま、また『剣客商売』シリーズ 十六巻まで読み返して当時の世情を知り、その上でやさしい江戸時代の歴史解説本を読んでみようかなと思っているところ。

池波正太郎の本のいいところは食べ物や人情や江戸時代の武士や庶民のことについて勉強できることにある。それと季節の描写にうっとりする。『春の嵐』は今の季節の話だ。先日の大阪の雨を思い出しながら読んだ。雨の降りかたについて江戸時代はこんなんやったかとその細やかさに感心した。いまはそんな情緒はないけど、読んで知って感じることはできる。