SUB40周年ライブ!

SUBは今日で40周年を迎えた。残念ながらわたしはそのころは天王寺にあったジャズ喫茶に入り浸っていてSUBを知らなかった。それから37年ばかり経って(すごい年月やなぁ)、エディ・ヘンダーソンのライブのときにはじめて行って、それから出入りするようになった。何度も書いているけど、1961年の「アート・ブレーキーとジャズ・メッセンジャーズ」のコンサートへ行った実績(?)がものをいっている。

たまたま今日は金曜日で、15年続いている西山さんと竹田さんの演奏日だ。早めに出かけたら昔なじみらしいお客さんがいていつもと雰囲気が違っていた。Tくんと若い女の子としゃべっているうちに客が増えてきた。わたしらの話題はアメリカ文学のこと、ふふ。

西山満さんのベースと竹田一彦さんのギターに弦巻潔さんのドラムが入って演奏がはじまった。何曲かあとからは滝川雅弘さんのクラリネットが入って雰囲気が変わる。クラリネットの音を聴くのは久しぶり、懐かしいような安らぐ音にうっとりした。
休憩後にはまた客が増えてぐっと雰囲気が温かくなった。ピアノが3人(歳森彰さん、蓼沼ゆきさん、松本ゆかさん)入れ替わり、ギターが竹田さんから塩本彰さんに替わり、ベースは西山さんから山本学さんと財盛弘さんに替わり、ヴォーカルは女性2人(城下麻弥さん、春田久仁子さん)と楽しい口トランペットもある男性ヴォーカル、ISAさんが順番に加わった。なんかもう音をもっともっとと食べてお腹いっぱいになってしまった感じ。

最後の西山さんと竹田さんのデュオが穏やかに心に沁みた。そしてギターの最後のひとふしが泣かせてくれた。この音を聴けたから今夜はしあわせ。
西山さん、おめでとうございます。
竹田さん、ありがとうございます。

ピーター・テンプル「壊れた海辺」

知らない作家の本を読んでいこうと思って図書館で借りた。分厚い文庫本で文字がびっしり。著者のピーター・テンプルは1946年南アフリカ生まれ、オーストラリアに移住し記者・編集者生活を経て作家になった。たくさんの著作がありオーストラリア・ミステリ界の第一人者だそうだ。

舞台はオーストラリアの南方に位置するヴィクトリア州の田舎町ポート・モンローと少し都会のクロマティ。ジョー・キャシン上級部長刑事は丘の朝の散歩を楽しんでいた。曾祖父の兄弟が植えた樹々が聳えているところを2匹の犬が狩りをしている。そこへ納屋に浮浪者がいると通報があった。追い立てると出てきた男レップは50代くらいで身分証もなにも持っていないという。クロマティへ行くというので、お金をいくらか渡そうとすると、「おれを人間扱いしてくれたからそれだけでいい」と答える。結局、キャシンはレップを連れて帰りベッドを提供し、自分の土地の大工仕事や牛の世話を頼むことになった。

ある秋の朝、ブルゴイン家の屋敷の主がひん死の重傷で倒れているのを家政婦が見つける。州警察直接の指示のもと、キャシンはクロマティ署といっしょに捜査にあたる。被害者の時計が州を越えてシドニーで売られたという情報が入る。時計を持っていったのはアポリジニの少年たちだった。そしてそのうちの一人はアポリジニ活動家ウォルシュの甥だった。少年たちを穏便に取り押さえるのに失敗したキャシンは、アポリジニ、マスコミとあらゆる方面から攻撃される。

アポリジニが絡んだ事件はアポリジニ出身の警官を当らせるという方針で、アポリジニ出身の警官ポール・ダウがキャシンの相棒となる。二人がだんだん信頼関係を築いていくところがいい。
意識不明だったブルゴイン家の当主が亡くなり、海を臨む土地の売却問題が浮上してくる。
上司たち、キャシンの複雑な家族問題、そして一夜のつき合いだけで他の男と結婚した女性の子どもが自分の子だと思う気持ち。

社会問題と個人の問題の狭間で苦しみつつも、信じられる上司や友人、そして恋人も得るキャシンがきっちりと描かれている。
【「たしかに、おれは渡りの労働者だ」レップはキャシンと目を合わさずに言った。「金をもらって人がやりたがらない仕事をやる。州から金をもらって、金持ちの財産を守っているあんたらと同じだ。金持ちに呼ばれれば、あんたらはサイレンを鳴らして駆けつける、貧乏人が呼ぶと、順番待ちの名簿があるからちょっと待て、そのうちにと軽くあしらわれる(中略)「おれたちの違いはな、こっちは仕事にしがみつく必要がないってことさ、ただ出て行けばいい」】
(土屋晃訳 ランダムハウス講談社文庫 950円+税)

ナイジェル・ニコルスン「ヴィタ・サックヴィル=ウェストの告白 ある結婚の肖像」

先月Sさんに送る荷物の中にこの本を入れたのがもうもどってきた。すぐに読み出してすぐに読み終わったのね。読む人が読めばすごくおもしろい本なのだ。
イングランド屈指の名門に生まれたヴィタ・サックヴィル=ウェストは外交官のハロルド・ニコルソンと21歳で結婚、そのかたわらに50冊以上の小説・詩・伝記などを書いた。ずっと日本には翻訳がなく知られていなかったが、映画化されたヴァージニア・ウルフの「オーランドー」のモデルとして知られるようになった。

本書が出たのは1992年(原作は1973年)で18年も経っている。わたしは早くから国書出版会から出た「オーランドー」を読んでいたので広告を見てすぐに買った。読んでびっくりというか喜んだというか、いまも大切にしている本の一冊である。

名門中の名門である夫婦の私生活を息子が包み隠さず書いているところがすごい。夫妻には子どもが二人いたが、夫婦ともに同性愛者だった。そして二人は愛し合っていた。だがお互いに同性の恋人をつくる。

暑くていけません。いつか涼しい日にこの続きを書くことにする。
(栗原知代・八木谷涼子訳 平凡社 3200円)

魔女会議と深夜のラーメン、はぴまん(Happy Monday!! DJ ageishi)

最近つき合い出した若い女性の友人たちが「くみちゃん、カワイイ」と言ってくれる。それとは別な子にお話したいと言われてお世辞かと思っていたら督促されて、では本気なのかとあわてて返信した。
というわけで、今日はパノラマで魔女会議したのであった。メールをくれたMさんと手芸部のHさんと最近何度も会っているKさんも加わって賑やかなことであった。Mさんの亡き母上がサラ・パレツキーファンだったそうで、ヴィクシリーズの話もあり、日本文学のあれこれ、そしてマルグリット・デュラスの本と恋人のことなど。好き嫌いが似ているのもうれしい。やっぱり恋愛の話があったが、その人の恋物語の参考にわたしの経験を引き出そうと頑張られた(笑)。

みなさんビールを飲んでいるのに、わたしはジンジャーエール2本とコーヒー飲んでお相手。途中から相方がきて話に加わったり、DJブースと反対側に写し出されている映画を見たり。コッポラとルーカスの映画だという「ポワカッツィ」の映像がすごくよかった。
DJ ageishiさんともお話できてうれしかった。若手DJの音も良かった。

夜中を過ぎたらお腹が減ってきたのでラーメンを半分コして食べた。濃厚でまだお腹に残っているのでもう少し起きていよう。

バースディ・ディナーはたこ焼き屋

大阪人のくせにたこ焼きを食べることがめっそない。年に一度あるなしである。アメリカ村の南のはずれにある〈味穂〉でたこ焼きを食いたいと思いつつ何十年(笑)。いや、ほんま、憧れの店だったんだってば。
あそこのバー、あそこのカフェと行きたいところをあげていったら、ほんまに行きたいのは〈味穂〉で落ち着いた。
結局12時過ぎて出かけたので30分近く歩いて1時ごろだったか。それでも夕方の飲みタイムのような混みかたで、時間の観念を失うくらい。
生ビールをたのんで、たこ焼き、どて焼き、餃子を食べた。陽気な客たちのざわめきが心地よい。どんどん注文して食べる様子が気持ちよい。

帰り道はさすがに足がつって三角公園で一休みした。無事に家まで歩けてほっ。シャワーと着替えで第一段階、相方がまたもや出かけたあとで半身浴と熱い紅茶で第二段階。そして、いま。あいだにちょっと絵本を見てた。
お湯がもったいないし、また汗かいたし、もう一度お風呂に入って寝よう。

アン・クリーヴス「白夜に惑う夏」(2)

調べた結果、仮面の男は自殺でなく殺されてから吊るされたものとわかる。イングランドから来て、港で船から降りる人たちに画廊のパーティ中止のチラシを配っていたのが彼だ。誰も彼のことを知らない。
前回と同じくインヴァネス署からやってきたテイラー主任警部が指揮をとることになった。テイラーは捜査の中心になるつもりだが、いらいらしながらも地の利があるペレスを尊重して行動する。
ケニーは仮面を外した男の顔を見て兄のローレンスでないことを確認した。ローレンスはベラに夢中だったがふられたので出て行ったものと思われている。イングランドへもどったテイラーのしぶとい調査で仮面の男の正体がわかる。
二人目の犠牲者を見つけたのもケニーだった。羊が岩棚で身動きがとれないでいるのを助けたあとに、視線を下にすると岩にぶつかってロディが死んでいた。

ペレスはフランの家で娘のキャシーに本を読んで聞かせる。この子の父親ダンカンは彼のかつての親友だった。そのわだかまりを超えて、いまのペレスの望みはフランとキャシーといっしょに家族を作ることだ。

ロディの死を捜査していると携帯電話がないことがわかり、クライマーに頼んで崖を探してもらうことになる。クライマーのカップルが崖をくだって岩棚をひとつひとつ探すが、洞穴で見つけたのは人骨だった。もっと昔に別の殺人があったのだ。
テイラーとペレスと部下の緻密な捜査の結果、ついに三つの殺人事件がつながっていることがわかり、殺人者がだれかがわかる。

とても緻密なミステリであると同時に、白夜のシェトランド島に住む人たちの気持ちがよく描かれている。暗くならない夜って想像できないけど、眠れない夜の憂鬱な気分が伝わってくる。イングランドから来たテイラーがペレスを見ていらいらすることで、シェトランドのペレスの気質が伝わってくる。
〈シェトランド四重奏(カルテット)〉あと2作訳してほしい。
(玉木享訳 創元推理文庫 1260円+税)

アン・クリーヴス「白夜に惑う夏」(1)

前作「大鴉の啼く冬」に続く〈シェトランド四重奏(カルテット)〉の2作目になる。前回の主役だった画家のフランはこの地で画家として頑張っている。そしてフランに想いをよせるようになった警官ジミー・ペレス警部が地道な捜査でがんばるし、前回もインヴァネス署からやってきたテイラー主任警部が精力的に働く。

シェトランド島の夏は観光の季節である。本土からたくさんの人たちが押し寄せて白夜を過ごす。両親のいる島で休暇を過ごしたペレスは、シェトランドにもどりフランをエスコートして展覧会場へ行く。今夜はフランとどうにかなるチャンスだと考えているので落ち着かない。会場の〈ヘリング・ハウス〉はベラ・シンクレアの持ち家で元はヘリング(ニシン)を干していたところを画廊に改造してある。島の出身で大金持ちになったベラは妖艶な画家で、甥のロディはロックミュージシャンとして人気が高い。今夜は絵の展示とともにロディも歌い、酒も出回るがもひとつ出足が悪い。会場で黒装束で仮面の男が泣き出し、みんな困惑して見ているだけなので、ペレスは連れ出す。

小農場主のケニーは介護センターで部長を務めている妻のエディスと暮らしている。15年前に〈ヘリング・ハウス〉を作り直したのはケニーと行方不明になったままの兄ローレンスだった。ケニーは男が走って行くのを見て、帰ってから庭にいたエディスに男を見なかったかと聞く。見なかったという返事だったが、翌日、ケニーはボート小屋で仮面をかぶった男の死体を発見する。
ペレスはフランの家から仕事場へ行く途中、携帯電話で男の変死体があると知らされる。自殺するつもりでこの島へきたわけではないだろう。なんらかの理由があってパーティに出席したはずだ。(玉木享訳 創元推理文庫 1260円+税)

大阪大空襲から65年—講演会は満員で入れず写真展を見てきた

昨日、姉の家で明日は空襲記念日やねと、65年前の3月13日夜から14日未明の大阪大空襲が話題になった。両親と長兄と次姉は命からがら逃げて、豊中市の父が働いている会社の寮へ歩いて行った。たまたまよそにいた長女は翌日戻ってきて家を探したら焼け野原で、遺体の山が築かれ死臭が漂っている中をもしかして家族がと探し回った。

姉が前日(3月11日)の朝日新聞夕刊を出してきたのを見たら、「遊郭のむ炎 娼妓の無念」という記事があった。新町遊郭経営者の息子だった徳田さんは、空襲のとき母と西成区の叔母の家に逃れたが、途中にはたくさんの人たちが火だるまになったり道頓堀川でおぼれ死んでいた。娼妓たちは4・5日後にがれきの下になっていた防空壕の中で黒こげになっているのが発見された。
徳田さんはそのことを封印して話したことがなかったが、年に数回、娼妓たちが蒸し焼きにされる夢を見る。「お女郎さんの無念を伝えるためにも、語らなあかん」と語り出したという記事だった。
新町遊郭の存在は中学生だった兄は知っていたが、通ってはいけないと親にも学校にも言われていたそうだ。「裏新町」と言われていたそうだが、わたしははじめて存在を知った。

今日13日に徳田さんの「ピースおおさか講演会」が森ノ宮のピース大阪であるというので、電話したらもう席がないが、写真展をやっているというので行ってきた。
特別展「焦土大阪〜写真でみる大空襲〜」は、毎日新聞社の焼け跡を撮った写真と、一昨年の12月に中央図書館でやった「なつかしの昭和堀江展」に出ていた写真があった。その他寄贈された戦争中の物品や書類などの展示をするコーナーがあった。
常設展示のシチュエーション・ガイダンス「15年戦争」では、日本のアジア諸国侵略のありさまが写真で展示されている。15分ほどの映像が15分おきに上映されている。

せっかくの機会に入れず残念だった。
※徳田さんの証言の様子は、朝日放送「NEWSゆう+」で15日午後6時台に放映される予定とあるので、忘れずに見よう。

追記(15日)
朝日放送「NEWSゆう+」で6時半ごろから10分くらい放映された。徳田さんが65年ぶりに故郷の新町へ足を踏み入れて、当時の住処の後を訪ね、すっかり変わったとおっしゃっていた。映っていた道はたいていわかる。父上が出征するときの映像も写し出された。娼妓たちが歩いていた。そして焼け跡の写真もあった。徳田さんはそのシーンを見ながら、焼け焦げて誰ともわからない遺体からの臭気のすさまじさについて語られた。
講演会では壇上ではなく一般席に座っておられて、発言のときは立ってマイクをもたれていた。大空襲のことはいままで話したことがなくて、去年はじめて語り出したそうだ。

初めて知ったのだが、うちの近所の日本交通の会社の敷地に空襲で亡くなった人たちの慰霊碑が建てられていた。当時の会社の社長が供養として建てられたそうだ。そこへお参りされて、これから毎年来ると言っておられた。

おばあちゃんの念仏

先日行ったお葬式は真言宗だった。お坊さんの「南無大師遍照金剛」と唱えるお経でわかった。その後に姉の家に行ったとき、謡本(うたいぼん)が数冊机の上に置いてあった。姉は謡を30年もやっている。謡で「南無大師遍照金剛」と出てくるのは「葵の上」「道成寺」で、「南無阿弥陀仏」というのは「隅田川」「当麻」だとページを開いてくれた。鎌倉仏教が興るまでは密教で、それ以後に鎌倉仏教が広がった。というような話をして「鎌倉仏教」という本を貸してくれた。まだ読んでないが。

わたしは不信心者であるが、仏像やお経は好き。
山梨のおばあちゃんの念仏はこうだった。「ふーどう、しゃかー、もんじゅー、ふーげん、じーぞう、みーろく、やーくし、かんのん、せーいし、あーしゅく、あみだ、だいにち、こーくーぞう」この後に「なむあみだぶつ」を何度か言う。母親もこれをうたって(?)いることがあった。
いまふと思い出して検索したら、「不動明王、釈迦如来、文殊菩薩、普賢菩薩、地蔵菩薩、弥勒菩薩、薬師如来、観音菩薩、勢至菩薩、阿弥陀如来、阿しゅく如来、大日如来、虚空蔵菩薩」のことだったのね。

新町遊郭を描いたマンガ、もりもと崇「難波鉦異本」(なにわどらいほん)

“難波鉦異本 上 (BEAM COMIX)東京から遊びにきたOちゃんが買ったばかりの本、もりもと崇「難波鉦異本」(なにわどらいほん)上・中を読み終わって持ってきてくれた。難波のそれも新町が舞台になっているからね。まだ下巻は出ていないそうだ。
マンガを最後に読んだのはいつかも忘れてるくらい久しぶりだ。読み出したら昔みたいに夢中になってしまった。

新町遊郭の遊女たちの格付けは、〈太夫〉が〈松〉で相撲でいえば三役、〈天神〉が〈梅〉で幕内クラス、〈鹿子囲〉が〈桐〉で十両クラス、以下になるとショートタイムでも客をとらせられる。
夕霧太夫亡きあとの新町遊郭。主人公の和泉は〈天神〉で、新町一の三絃の名手であり、実力からいえば〈太夫〉のところを、客あしらいが下品なので、〈天神〉で止まっている。禿(かむろ)のささらを従えての、すさまじくもしたたかな日常が描かれている。
ストーリーがおもしろくて、絵が良くて、構成がしっかりしていて、エロくて、いやなところが少しもない。

本書にある新町郭東口大門があった新町橋と横堀川の跡あたりをよく歩いている。埋め立てられて長堀通りになってしまった西長堀川の橋の名残りや、大阪大空襲で消失したわが家があった場所は日常的に見ているので、古地図を見ているように懐かしい。

中巻にこんなところがあった。
大坂落城で真田隊全滅のあと、ひとりの武士が行くあてもなく死のうとしているとき、やはり身一つで逃れてきた姫君を犯すが、その後にその女性が姫と知る。
姫は言う。「見よ、この骸の山を・・・大坂は負けたのじゃ・・・・勝者ではない、敗者こそ無念の骸の上に何かを成して報いるべきぞ・・・」
姫君は遊女となり、武士は商人となる。その後の話も哀切である。
早く下巻が読みたい。
(エンターブレイン 上下とも620円+税)