最初に手にしたのが6月の終わりで感想は「読み出した」と「読書は佳境に入っているが」を書いた。それから最後まで読んだんだけど、落ち着いて感想を書けないまま、二度目を借りて、また三度目を借りた。今度はちゃんと感想を書いて返したい。
小野十三郎からはじまって、文学、映画、将棋などで具体的に大阪の資本主義発展の様子がわかるように導いてきた長い導入部だった。いまようやく第四章「無政府的新世界」に入り、最初のタイトルが「借家人同盟、あらわる」である。
【〈大正十年二月十四日中ノ島中央公會堂に於ケル住宅問題演説会ニ際シテ暴漢ニ襲撃サレタル逸見直造〉の写真がある。この写真はあえて傷ついたみずからの姿をさらすことで、暴力に屈しない姿勢をアピールしているのだ。】
写真を掲載しているのは「借家人の戦術—借家法と借地法」という小冊子。逸見直造という傑出した人物が大阪で活動し、来阪していた大杉栄とも行動をともにしていたという。
1918年(大正7年)に起こった米騒動は今宮町(釜ヶ崎付近)天王寺公園(天王寺公会堂)を発火点として燃え盛った。人々は公会堂を埋め尽くし聴衆はみずから弁士となって演説を繰り広げた。竹槍部隊があらわれて米屋に放火したり火消しのホースを日本刀で切断したとある。ほんまにこんなことが大阪であったんや。
逸見直造の次男の吉三(当時16歳)は大杉栄の米騒動時の行動について語っている。このように大杉栄は運動の中にいたのだが、運動史に現れるのはここからあとである。
【事実の詳細は謎である。しかし、次のことは確認できる。すでに大杉栄は、それが悪夢であれ幸福な夢であれ、騒然性の時代にあって、生きたまま夢みられる人であったということだ。】
次の章では逸見直造について詳しく書いてあって、その合理主義が母親の考えで小学校を出たらすぐにアメリカへ渡ったせいだとわかる。彼は1899年に渡米し各地を転々としさまざまな職業につき1908年に帰国した。
紹介など簡単にできるものではないが、一種の熱気を持って読んだことだけでも伝えられたらいいな。
(青土社 3600円+税)