カーリン・イェルハルドセン『子守唄』

スウェーデンのストックホルム、ハンマルビー署のコニー・ショーベリ警視と部下たちがすさまじい犯罪に正面から立ち向かうシリーズの3作目。今回も最初から最後まで圧倒的な筆力に引っ張られて読んだ。

火曜日の朝、土曜日と日曜日の間に行われたとみられるひどい殺人現場にショーベリ警視と捜査員たちはたじろぐ。血の海のダブルベッドに横たわっているのはアジア人の母親ケイトと二人の男女の子どもだった。
母親はフィリッピン人で清掃会社に勤務していたが失職中である。しかしマンションは彼女のものになっているから別の収入があったと考えられる。マンションには家具もなく男気もない。

ショーベリ警視はエリクソン警部の無届欠勤が続くので彼の部屋に入って調べる。エリクソンは仕事はできるが人と交わらず孤独な生活をしていた。
ハマド刑事が唯一ケイトの部屋にかかっていた男物セーターの匂いに気がつく。エリクソンとなにかつながりがある。ショーベリ警視は彼のつらい過去を探っていく。

一方、ショーベリもまた深い悩みを抱えている。父は早くに亡くなり母に育てれらて仲が良い親子なのだが、母は過去を話さない。ショーベリはお手の物の調査力で自分の過去を探り、死んでいるはずの祖母を見つける。
ショーベリにも驚くべき過去があったのだ。

ハマド刑事とペトラ・ウェストマン刑事の間の誤解とわだかまりが、いつまでも解けなくっていらいらした(笑)。わたしはハマドがお気に入り。
「訳者あとがき」によると、このシリーズは8作目まであるらしい。翻訳を期待してます。
(木村由利子訳 創元推理文庫 1100円+税)

子守唄 (創元推理文庫)