メアリ・バログ『麗しのワルツは夏の香り』(2)

先に出た「うたかたの誓いと春の花嫁」のヒロインである次女ヴァネッサにはすでに男女の子どもが生まれ、夫婦仲は円満。
今回の主人公は三女キャサリン(ケイト)で、二十歳になったキャサリンは清純な美しさで輝いている。
ジャスパー・モントフォード男爵はシーダーハーストに広大な領地と屋敷と財産を持つものの、ロンドン社交界では悪名高い放蕩者。娘のいる上品な貴族は避けて通るほど。25歳になった誕生日に酔っぱらった悪友たちとのやりとりで、清純な乙女を誘惑するという賭けをやることになり、名前があがったのがキャサリンだった。
2週間で彼女をベッドに誘うというもので、それは賭け帳に記載された。もともとジャスパーはキャサリンの美しい瞳を意識していた。キャサリンもハンサムで傲慢なジャスパーを意識していたのだが、キャサリンのいとこのコンスタンティンが放蕩者故に紹介を故意に避けていたので言葉を交わすことはなかった。ジャスパーは絶対に誘惑してやると思う。

キャサリンがヴォクソールガーデンで開かれたパーティに行ったとき、ジャスパーは足首を挫いた知り合いの代わりにそのパーティに来た。
キャサリンのすぐそばに座って、苺を食べるキャサリンの口元をじっと見つめていたが、やがて声をかけた。
そして花火があがるまでのそぞろ歩きがはじまったときにジャスパーはキャサリンの腕をとる。近道だとひとのいない道へそれたふたりは向き合う。誘惑するジャスパーをキャサリンは拒否しなかった。反対に「人を判断するときは自分でします」とキャサリン。しかし、彼は言ってしまう。賭けをしたこと、賭けに負けることにしたことを。キャサリンの誇りを傷つけられた怒り。

それから3年後、その賭けの内容がジャスパーを陥れようとする身内の口からロンドン社交界を駆け巡る。ヴァネッサ夫婦やマーガレットやスティーブンにも大変なスキャンダルである。
これしか道がないと決めたのが結婚することで、キャサリンとジャスパーは結婚式をあげ、シーダーハーストの領地に住むべく馬車に乗る。
それからはいろいろあるが、ふたりは協力し合って幸福に暮らすようになる。そこまでの長い物語が楽しい。
(山本やよい訳 原書房ライムブックス 933円+税)