パオロ・ソレンティーノ監督『きっと ここが帰る場所』

ああ、よかった〜 この映画、すごい。
昨夜、アイルランド関連のことを告知している知り合いのミクシィ日記にあったU2のボノに関するニュース、【「ボノはニューヨーク大学から名誉博士号を授与したいとのオファーをとても光栄に思いました。イヴが卒業生となることもあり、家族全員で話し合った結果、ボノは娘の卒業を誇りに思う一人の父親として式に参列したいとの結論に達したんです」と情報筋は語っている。】を読んだ。ボノの娘さんを検索したらショーン・ペン主演の映画に出演しているとのこと。予告編を見てこれは見たいと思った。

だいぶ前になるが近所にTSUTAYAが開店してまだ行ったことがなかった。以前は難波店まで行ってたのに、最近は貸していただいたのばかり見ている。カードが共通で使えるそうで久しぶりのレンタルビデオ。

最初から妖しい雰囲気。中年男のシャイアン(ショーン・ペン)が口紅を塗りアイシャドウをつけメイクしている。
シャイアンはかつてロック界の大スターだった。いまはダブリンの豪邸で妻(フランシス・マクドーマンド)と暮らし、つきあっているのは近所の少女メアリー(イヴ・ヒューソン)くらいだ。ぼさぼさの黒髪をひるがえしながら買い物に行ってまともな人からヘンな目で見られたりするが、反面、株でしっかり儲けてもいる。

デヴィッド・バーンのライブに行くシーンがあり「This Must Be the Place」が演奏されている。観客の中にシャイアンがいる。
バーンとの会話でシャイアンの過去がわかる。彼はミック・ジャガーと共演したくらいな大スターだった。暗い曲が若者にウケると知って儲けるために暗い曲を作った。挙げ句は自殺者が出た。そういうことがあってロック界から引退したのだ。最初のほうで墓場に行って花を供え、墓の中の若者の父親に「ここへは来るなと言っただろう」と追い返されるシーンがあったのはそういうことだった。

そこへ故郷のアメリカから父が危篤という知らせ。シャイアンは飛行機が嫌いなので船でニューヨークに向うが、すでに父は亡くなっていた。亡がらには収容所の番号が記されていた。30年間会っていなかった父が、アウシュヴィッツの収容所にいたときに侮辱されたナチ親衛隊員ランゲを探していたことを知る。葬式の後、ユダヤ人街を訪れてランゲの行方を聞くが話し合いがうまくいかず、わずかな手がかりをたよりに追うことにする。

シャイアンはランゲを求めて車でアメリカ横断の旅に出る。
いつもキャリーバッグを引いてよろよろと情報を求めて歩きまわる。過去のシャイアンを知っている食堂で働く女性と出会い、そのこどもにも慕われるが妻がいるからと断る。だが、あとでプールをプレゼントする。
田舎の食堂でキャリーバッグの発明者と話をするところがおもしろかった。

最後のシーン。メアリーのお母さんがはっと彼に気付いてにこにこする。彼はメイクを落としてこざっぱりとした男になっていた。
2011年のイタリア/フランス/アイルランド作品。音楽がデヴィッド・バーン(元トーキング・ヘッズ)。

「従軍慰安婦」の問題が大きく取り上げられているいま、この映画を見ることができてよかった。過去を忘れ去ってはいけない。