ジャネット・イヴァノヴィッチ『あたしの手元は10000ボルト』

5月10日の〈関西翻訳ミステリー読書会〉の課題書だったので久しぶりに買って読んだ。
読書会で翻訳者の細美さんが言っておられたが、阪神大震災(1995年)で被災して仮設住宅住まいのときに翻訳の話があったそうだ。第1作の「私が愛したリボルバー」は1996年発行でVFCでもずいぶん話題になった。
「わたし」でなく「あたし」と訳したことの話もされていたが、はじめて読んだときは新鮮だった。3冊目くらいまで買って読み、そのあとは借りて読んで何冊目まで読んだか覚えていない。19冊原書で出ていて訳されているのは12冊、本書が12冊目である。
課題書なので買ったがどうもこの表紙はこまっちゃうな。最初のころのハードボイルドな表紙がなつかしい。

主人公のステファニーの職業はバウンティ・ハンター(保釈保証会社の逃亡者逮捕請負人)である。たしか1作目が出たころに見た映画がバウンティ・ハンターものだった。いま検索したがそれらしいのが見つからない。いろいろあるのがわかったのが収穫。女性バウンティ・ハンターが主人公の「ドミノ」を見たい。サム・ペキンパーの傑作「ワイルド・パンチ」もバウンティ・ハンターものなんだな。

今回はハンター生活に慣れてきたあたし(ステファニー)が、この商売の師匠でありアブナイ男のレンジャーの闘いを援護する。バウンティ・ハンターのレンジャーに憧れて、そっくりさんになった男がレンジャーが若いときに生まれた娘を母親と継父のところから誘拐する。娘の無事を祈りつつ誘拐犯を追うレンジャーとステファニー。そして幼なじみの刑事モレリがからむ。
レンジャーがカッコいい。子分とハイテク機器を使いこなして犯人を追う。ステファニーのところで泊まるがセックスなしだけど、同じベッド。次の朝一にモレリが訪ねてきたときは偶然カーペットに枕と毛布が落ちていて、危機一髪!なのであった。
あたしはにせのレンジャーに近づいて娘を助けようと近づくが、スタンガンでやられて失神している間に携帯2台も非常ボタンも取り上げられてしまう。

モレルとレンジャー、いいオトコ2人のどちらとくっつくのかな。
レンジャーは「おれはデザートだ」という。
【「あんたの食生活の基盤になりえないもの、だ」んまあ、ここがあたしの難題なのだ。デザートは、あたしの食生活の基盤なのだ!】
【モレリはあたしを見た。「あんたを愛しているわ」あたしは彼に言った。「ああ」モレリは言った。「知ってる。だがおまえがそう言うのを聞くのはいいものだ。おれもお前を愛しているぜ」口に出さなかったのは、あたしはレンジャーも愛しているということだった。】
(細美遥子訳 集英社文庫 838円+税)