ミス・リード『村の学校』

先月読んだ「ドリー先生の歳月」のドリー先生(ミス・リードはミス・クレアと書いている)は、自分が学んだフェアエーカー村の学校の先生になり長く働いていたが、授業中に倒れて退職する。その後も村の両親が残した家に住み続け、体調がよくなってからは学校行事の手助けなどで登場する。
ミス・リードはその学校のもう一人の先生であり校長先生でもある。ミス・リードは校長先生だけに威厳があり、しっかりと子どもたちとまわりの人たちの面倒をみるし、自分の意見を持っている。

本書はミス・リードが語る「村の学校」のお話。〈第 I 部 クリスマス学期、第 II 部 春学期、第 III 部 夏学期〉。秋の「新学期の朝」からはじまり夏の「学期の終わり」まで。全児童数40人の小学校に新入生が3人が入学。その子どもたちと村の人々の暮らしが綴られている。時代は第二次大戦直後でまだ村に新しいものは入ってこず、村人は昔ながらの生活をしている。
ミス・リードは人間観察能力に優れていて、特に校務員のミセス・ビリングルの描写がするどい。実際にこういう人を相手に苦労したんだろう。ミス・クレアの後に入った先生のミス・グレイは、ともに音楽を愛するアネット氏と婚約する。
小さい村の一年、いろんなことが起き波紋が広がることもあるが、歳月を穏やかに迎えて見送る。いまは過去の桃源郷みたいなイギリスの田舎が懐かしい。
(中村妙子訳 発行:日向房 発売:星雲社 2000年 2400円+税)