イーヴリン・ウォー『回想のブライズヘッド 上下』(2)

いま三度目を読み終ったところ。深い作品だとため息をついている。
〈わたし〉チャールズ・ライダーは、ブライズヘッドを所有するマーチメイン家に次男セバスチャンの親友として迎え入れられる。父は第一次大戦に所領の使用人たちを編成した部隊を率いてヨーロッパ戦線に出て行き、戦後は愛人とヴェニスで暮らしている。カトリックの家系であり特に母は敬虔な信者で、邸宅の庭には礼拝堂がある。
〈わたし〉には親族が父一人しかいなくて、裕福な父の仕送りでオクスフォードで学んでいる。セバスチャンと知り合って酒を飲む仲間がいる快楽を覚えた。
休暇でロンドンの父の家にいると、セバスチャンからケガをしたと電報が届き慌ててブライズヘッドへ赴く。迎えに来たのは妹のジューリアでセバスチャンそっくりな美女だった。セバスチャンは常に酒びんを離さないようになっている。
酒代をセバスチャンにせびられ渡したことでマーチメイン夫人になじられ、ブライズヘッドから追放された〈わたし〉は、勉学よりも画家に向いていると自分で決めてパリへ留学する。建築物専門の画家になるつもりだ。
セバスチャンは外国へ出たときに母が手配した同行者から離れて、定めなくさまよい酒を飲んでいる。病気の母がセバスチャンに会いたがっているとのことで、〈わたし〉はカサブランカへ飛びフェズへ行く。探し当てたセバスチャンは送金を受け取っており、ひたすら酒を飲む毎日を続けている。しかし人柄の良さでまわりの人たちには愛されている。イギリスに帰る気はない。

ジューリアは俗物の政治家レックスと激しい恋をして結婚して何年か経った。
〈わたし〉は友人の妹シーリアと結婚して子どもがふたりでき画家として名をなしている。シーリアは理性的な女性で夫を売り出すことに専念している。〈わたし〉は2年間メキシコから中部アメリカにかけて絵を描く旅を続けニューヨークのエイジェントに送っていた。ニューヨークで待つ妻と会って、船便でイギリスに帰ることにする。シーリアは乗船するとすぐに社交にかかる。しかし船は大荒れでシーリアはベッドから離れられず、〈わたし〉はジューリアと偶然出会う。そしてはじまる恋。「芸術に社交界のシーリアと、政治に金のレックス」と相手のあるふたりの恋は燃え上がる。

こっちが思ったような結末にいかない。そうだよなぁとも思える。
わたしは宗教をもっていないけど、なんとなく最後のジューリアの決断はわかるような気がする。イギリスにおけるカトリック、これもわからないことだけど、ちょっとだけわかったような気がしてきた。
【「月が上がって沈むまでの人生なのだわ。そのあとは闇なのね」】
(小野寺健訳 岩波文庫 上700円+税、下760円+税)