マイケル・ ウィンターボトム監督『バタフライ・キス』

マイケル・ ウィンターボトム監督の映画をT氏のおかげでかなり見ることができ、なんとなくわかったような気になっていたのだが・・・。第二弾としてまた数本を貸していただいて、そのうちの1本「バタフライ・キス」(1995)をタイトルがいいからとなにげなく見たら、すげえ映画なのであった。

白い服の美しい女性が穏やかに語っているシーンからはじまる。ミリアム(サスキア・リーヴス)であることが見ているうちにわかってくる。
北イングランドのランカシャー。ユーニス(アマンダ・プラマー)はガソリンスタンドの売店で愛の歌を探していて声をかけた店番の女性にジュディスかと聞く。彼女はジュディスではなかった。ユーニスはなんということもなくその女性を殺す。
ミリアムが店番をしているガソリンスタンドにも来て同じように聞く。店から出て道ばたに座って話すふたりのシーンがよい。どきっとするユーニスからのキスシーン。ミリアムはユーニスを一晩泊めることにして家へ連れて帰る。その家でも勝手気ままなユーニス。病気の母親を狭いベッドに押し込め、母親のベッドでユーニスはミリアムを誘う。ユーニスの体は入れ墨が入り鎖が巻かれ肌は焼かれたように変色している。
母親をほったらかしてふたりの旅がはじまる。
旅の途中で関わった人間たちを殺し、その人間の車でまた旅を続ける。なぜか死体はすべて見つからないし、不審者として車を止められることもない。こんなロードムービーははじめてだ。
ミリアムの無垢の愛はユーノスが死を求めると死を与えるところまでいく。

キリスト教をわかっていたり旧約聖書を読んでいたらと思ったが、考えているうちにそうでもないような気がしてきた。いまの時代を生きる人間を描いた映画だ。