アルフォンソ・キュアロン監督『トゥモロー・ワールド』続き

セオ(クライヴ・オーウェン )が働いているロンドンの風景から映画ははじまった。赤い二階建てバスは薄汚れているが走っている。だが、通行証を頼みにいった相手がいる政府のオフィスは機能的で美しい。
18歳で亡くなった青年を悼んで花を捧げるひとたちの姿は、ダイアナ妃を悼んで花を捧げたひとたちと似ていた。死に逝くひとばかりで構成されている世界は退廃している。

ロンドンを出た車は農村地帯をひた走る。美しいイギリスの田舎が薄汚れている。そこに隠れ住むジャスパー(マイケル・ケイン)とコミュニケーションのできない座ったままのかつて美しかった妻。ジャスパーは大麻のようなものを栽培し闇で売って金をかせいでいる。

官憲から危うく逃れて瓦礫の街の荒れ果てた建物の中で出産したキー(クレア=ホープ・アシティー )と助けたセオが銃撃戦の中を赤ん坊を抱いて歩くと畏敬に満ちて戦士たちは立ち止まる。