サラ・パレツキー『ナイト・ストーム』(3)

放っておいてほしいとシャイム・サランターに言われたヴィクだが、彼女は事件を追いかけ、いろんな人から話を引き出していく。サランターは孫娘が行方不明になり深夜にヴィクの住まいを訪ねる。
読んでいてサランターってジョージ・ソロスに似たとこがあると思った。ソロスはハンガリー系のユダヤ人でアメリカに渡って財を成し、慈善活動や政治活動に大金を使っている。サランターも東欧出身のユダヤ人であり、財団をつくって移民を助ける事業をしたり文化的な活動をしている。

サランターの過酷な少年時代がヴィクの部屋で語られる。
リトアニアから東へ向かった父と兄はパルチザンとともに戦ったが、スターリンの強制収容所で最後を迎えたのが、のちに何年もかけて調べてわかった。残った母は姉とサランターの命を助けようと、警察の補助組織の男(リトアニア系ユダヤ人の絶滅作戦に協力したリトアニア人)の慰みものになって耐えたが、結局、母と姉は殺された。
13歳のサランターは過酷な日々を生き延びて脱走し路上生活ののちにスウェーデン行きの貨物船に乗せてもらい、そこからシカゴにやってきた。

おそろしく過酷な捜査を続けるヴィクの物語にひととき温かい光がふりそそぐ。恋人のコントラバス奏者ジェイクのひとこと「ヴィクトリア・イフィゲネィア。ぼくの生涯のなかで、きみのように美しい人を見たのは初めてだ——たぶん」二人は午前2時の閉店時間まで踊って食べてベッドに入り翌朝ジェイクは演奏旅行へ。
ヴィクはすぐに仕事へ。

それにしても体を動かす調査活動とコンピュータを使っての調査と、私立探偵も大変な時代になったものだ。少女たちだってたいしたもの。家族の過去をネットで探ろうとしたり。
ヴィク・ストーリーをずっと読んできて思うんだけど、最初は電話とファックスだったがパソコンを使いこなすようになる。最初はさまざまな機関の知り合いに電話で秘密情報を教えてもらったりしていたが、いまや検索で間に合うことが多い。最初はウィンドウズだったけど、かなり早くからMacになった。40歳のときはヴィクを慕っている若者ケンがパソコン関連を手伝ってた(バースデイ・ブルー)。
いつのことだったか、ヴィクがパームを使っていた。わたしもパームが欲しいと思ったことがあったと思い出す。(パームって名前がいま出てきてびっくり)

サラ・パレツキーさんとお会いしてから2年経つ。奈良駅内の喫茶店でiPadを出して写真を見せてくださった。あれは最初のiPadだった。わたしが買ったのはiPad2だ。
(山本やよい訳 ハヤカワ文庫 1160円+税)