ニコラス・ブリンコウ『マンチェスター・フラッシュバック』

先日〈翻訳ミステリー大賞シンジケート〉のサイトで〈わが愛しのゲイ・ミステリ・ベスト5◆パート2(執筆者・柿沼瑛子)〉を読み、〈パート1〉も読んでびっくり、10冊のうち3冊しか読んでない。
そのうち2冊(サラ・コードウェルの「かくてアドニスは殺された」、ニコラス・ブリンコウの「マンチェスター・フラッシュバック」をアマゾンの中古本で注文。「かくてアドニス・・」のほうはクラシックミステリの香りがして楽しそう。

「マンチェスター・フラッシュバック」(1998)は最近見た「ジョイ・ディヴィジョン」のイアン・カーティスを描いた映画「コントロール」と同じマンチェスターが舞台だ。ディケンズの作品にも出てきてた工業都市で、大阪が日本のマンチェスターといわれていたときもあった。

マンチェスター警察のグリーン警部がロンドンのカジノへ行く。カジノの支配人がジェイクできちんとした仕事ぶりだが、15年前はマンチェスターの不良少年でありグリーンと関わりがあった。
ゲイ小説ということで、グリーンとジェイクが恋人同士だったとか思って読み出したのだが、そこは違ってた。

グリーン警部は15年前の男娼殺しと同じ手口の殺人事件が起きたので、ジェイクに手伝ってほしいという。殺されたのはジェイクの男娼時代の仲間だった。
ジェイクは16歳から自分は〈燃え尽きた男〉と思っており、知らない人からも〈トップモデル〉と間違えれほどきちんとした服装をしている。いまやジェイクは結婚していて愛し合っている妻がいる。

一等車でマンチェスターの駅に到着したジェイクは15年前の自分と向き合う。
当時17歳のジェイクは体を売って稼いだ金で夜になると親友のジョニーとディスコに繰り出し、パンクミュージックとドラッグで狂っていた。そうしているうちに路上で少年に出会い、児童福祉関係者によってとほうもないことが行われているのを知る。またゲイを蔑んでいる警官とのやりあいがあり、ジョニーは殺される。

イギー・ポップやデイヴィット・ボウィやブライアン・フェリーの曲がかかるディスコで、ラリった少年たちが踊る。80年代のパンクシーンを思い出しつつ読んだ。
著者のあと2冊(「アシッド・カジュアルズ」「ラリパッパ・レストラン」)を読むのが楽しみ。