P・D・ジェイムズ『女には向かない職業』(1)

ずっと昔に読んだ本が姪の家にある姉の遺した本棚にあったのでもらってきた。ヴィク・ファン・クラブを発足させる前に読んでいたから21年以上前になる。もう一冊「皮膚の下の頭蓋骨」(1982)を読んだ覚えはあるのだがこれも全然覚えていない。
一昨年にアダム・ダルグリッシュ警視シリーズを数冊読んでP・D・ジェイムズのとりこになった。「女には向かない職業」(1972)を再読しようと思ったのもダルグリッシュ警視のおかげである。そのダルグリッシュ警視が本書に出てきたのにはびっくりした。ほんまにきれいに忘れていたので(笑)。

コーデリア・グレイという名前がまずステキ。リア王の娘コーデリアからとった名前である。彼女が生まれてすぐに母が死んだ。それ以来父親(旅まわりのマルキシスト詩人、そしてアマチュア革命家とコーデリアは説明する)と暮らすが養母は次々に変わり、学校の先生を困らせ、という具合で成長する。頭がよくAクラスであり大学の奨学金もとれたはずなのに16歳で父親の便利屋をするようになった。

探偵事務所長のバーニィ・プライドはダルグリッシュ警部の部下だったことがあり、警察を辞めてからも誇りにしていた。コーデリアは探偵仕事や銃の扱いを教えてもらいつつ彼のもとで働いてきた。
バーニィが癌を苦にして自殺したあと、引き継いで探偵事務所をやっていくことにする。コーデリアの想像の中の母は探偵は〈女には向かない職業〉と思っているのだが。こうして22歳の女性探偵が誕生した。

最初の仕事の依頼は自然保護に対する貢献でナイトに叙せられた高名なロナルド卿からだった。以前した仕事の依頼主からの紹介だったが、バーニィはこの仕事には絶対ボーナスがつくといっていた。そのボーナスがコーデリアの第一回の仕事となった。
秘書のレミングが事務所に来ていっしょにその屋敷を訪れる。ロナルド卿は「わしの息子が首をくくった。その理由を調べてもらいたい」と依頼する。

コーデリアは息子が住んでいた農園のコテージに住み込む。ここからマークの大学友だちからの情報を得るためにケンブリッジへ行く。
(小泉喜美子訳 ハヤカワポケットミステリ)