ロジェ・ヴァディム監督『危険な関係(’59) 』

原作の「危険な関係」(ラクロ)を読んだのはずっと昔のことで、澁澤龍彦あたりが紹介していたから読んだのだと思う。メルトイユ侯爵夫人という名前をずっと覚えているくらいに影響を受けた。徹底した悪女ぶりがすごい。

映画「危険な関係(’59) 」は製作されてすぐに日本で上映されたのだろうか。見たような気がしていたが、見ていなかったようでもある。ヌーベル・バーグ以前のフランス映画をいっぱい見ていた時代だ。
ジェラール・フィリップの最後の作品だということはいまはじめて知った。いま主な出演作品を見たら「危険な関係」以外は全部封切りで見ていた。

見たとはっきりいえるのは90年代にレンタルビデオで見たときだ。そのときは一言でいえばつまらなかった。音楽がセロニアス・モンクとアート・ブレイキーとジャズ・メッセンジャーズでそのときはわかっていたろうが、忘れたままだった。ただ若きジャン=ルイ・トランティニャンをいいなと思ったのは覚えていた。

さっき見たらびっくりするくらいよく覚えていた。全然つまらなくない。音楽がよくて画面とぴったり合っているところに感動した。ジャンヌ・モローの悪女ぶり、ジェラール・フィリップのモテ男ぶり、アネット・ヴァディムの色気のある清純さ、ジャン=ルイ・トランティニャンのおたくっぽい青年・・・登場人物みんなところを得ている。
ジャズクラブのシーンが長くて楽しめた。成熟した大人の社会であることが羨ましい。