アンドリュー・クレメンツ『はるかなるアフガニスタン』紹介

アフガニスタン カプールの北の丘にサディードという頭のいい少年が両親と妹と住んでいる。先生が学校にとどいたアメリカ人少女の手紙に返事を出すのが礼儀だと村の長老たちを説得する。そして勉強のできるサディードを推薦するが相手が女の子なので、妹に書かせることになった。2歳年下のアミーラと文案を考え彼が英語に翻訳して返信を出す。

アメリカ イリノイ州の少女アビーは体育館の壁にしつらえてある岩登りが好きで、勉強する気がなく落第さすと教師にいわれる。必死で勉強するからと頼むと勉強以外の課題としてくじびきで外国の子どもとの文通することになった。山のあるところの人がいいとアフガニスタンを選び手紙を書く。

ふたりとも両親に愛されてしっかりと生きている。アフガニスタンもイリノイ州も大地に根ざした場所である。妹の名前だけど実はぼくが書いていたと別の手紙で告白し、ふたりの気持ちがつながる。
しかし、アメリカでは掲示板に貼った手紙のコピーにアフガニスタンの旗の写真をつけたのが、気に入らないという人がおり、アフガニスタンでは切手のアメリカ合衆国国旗が批判される。
アビーにはカプールの丘の石のかけらが、サディードにはイリノイ州の大地の土がほんの少し残された。

とても楽しく、ほろ苦く、一息で読んでしまった。
これで物語は終わってしまうのだが、数年後に少年はアメリカの大学に行き、少女と再会するという後編があったらいいな。
(田中奈津子訳 講談社 文学の扉 1400円+税)