アンドリュー・クレメンツ『はるかなるアフガニスタン』感想

昨日は物語のおもしろさに引っ張られてたったと読んであらすじだけを書いて終わってしまった。
はじめて読んだ作家だけど、アンドリュー・クレメンツは優れた児童文学の書き手のようだ。職業としてきちんと考え抜いた物語を書く。そしていま生きて学んでいる少年少女たちを励ます作品を書くひとだと思った。

細かいことにも気が配られている。アメリカの少女はアメリカという国を現すいろいろなデザインの切手をたくさん貼った手紙を出す。なにげなく少女っぽい。切手を収集するのではなく使うために買う切手愛好者としてうれしくなる。

ふたりともそんなに豊かではないが、愛に恵まれた家庭の子どもで賢く育ち、家事の手伝いをするのが当たり前と思っている。そういう生活がすごく自然に描かれているのも読んでいて楽しい。

少年が小さな丘の石のかけらを送ると、少女はイリノイ州の土を送ってきた。
【この土は、森の中の、今作っている木のとりでの近くで取りました。(中略)だれもさわったことのないものを(中略)地球上に生きてきた人間の中で、この土をさわるのはわたしが初めて。そして、あなたが二番目です。】

2009年の作品で翻訳は2012年2月。
(田中奈津子訳 講談社 文学の扉 1400円+税)