木下恵介監督・製作・脚本「香華」

「婦人公論」1961年1月〜12月に連載された有吉佐和子の原作小説の映画化。1部〈吾亦紅の章〉、2部〈三椏の章〉と分かれていて合計201分の白黒映画、1964年。
はじまりは紀州の小地主の家。祖母を田中絹代、母郁代を乙羽信子、主人公朋子を岡田茉莉子。

郁代は20歳で後家になったが小学生の朋子を母の家に残して高坂の後妻となる。村人の噂の中を花嫁姿で嫁ぐ母を見送る朋子は祖母と暮らしていたが、やがて祖母は死に、母の嫁ぎ先へ。まもなく継父が静岡の遊郭へ連れて行って半玉として売る。賢い朋子は勉強もでき芸事にも励んで日々を過ごしていた。そこへ郁代が花魁として売られてきた。

朋子はここからすごく美しい岡田茉莉子になる。東京弁がすごく歯切れ良い。
17歳になった朋子は東京赤坂でおかみさん(杉村春子)に礼儀作法と一流の芸をしつけられてお座敷へ。やがて貴族に水揚げされて小牡丹という名で一本立ちする。
士官学校の江崎(加藤剛)を知って一世一代の恋をする。真面目な江崎に待ってくれと頼み、伯爵の世話で独立して置き屋をはじめて6年。
伯爵が病死して、葬式にも行けない身分を実感する朋子。追い打ちをかけるように、母が女郎だったことを理由に反対され結婚できないと江崎に告げられる。
40代半ばの母は昔の雇い人と結婚するとはしゃぐが、朋子にはだれもいない。

関東大震災で全てが壊されたが店を建て直し仕事に生きる。
第二次大戦がはじまり緊張の日々。訪ねてきた旧知の野沢(岡田英次)と京都へ行くが、そのとき東京は大空襲でなにもかも焼かれてしまう。
焼け跡の防空壕生活が続くが、やがて建て直し店をはじめて安定してきたころ、新聞で江崎が絞首刑されるという記事を見つける。巣鴨の収容所に通い続けて一度だけ顔を見ることができたが、その後絞首刑されたと知る。

倒れて入院した朋子を見舞いに行こうとして交通事故に遭い母は死亡。遺骨を持って和歌山に行くが引き取りを断られ、遺骨の包みを壁にぶつける。
いまは夫と別れてもどってきた妹の息子の面倒をみるのが楽しみになっている。

座敷に座って少しだけ会話する男が菅原文太。若き日の文太さんが二回出てきた。
加藤剛と岡田英次と菅原文太の3人が見られてよかった。