レジナルド・ヒル『探偵稼業は運しだい』

レジナルド・ヒルのダルジール警視ものとは別のシリーズで私立探偵ものである。1月にSさんから貸していただいて読んだ「幸運を招く男」が1冊目で、本書は3冊目。表紙を見てコージー・ミステリと間違ったくらい明るい表紙だ。
1冊目はアメリカに例えればデトロイトの感じ。ジョー・シックススミスは工業町ルートンで旋盤工をしていて失業し、これならいけるかと私立探偵事務所を開いた黒人の独身男。冴えないけれど愛嬌がある。お節介な伯母さんと彼女に紹介されたペリルとうまくいきそうだったが。

今回は季節が夏というだけでなく全体にカリフォルニアの雰囲気である。
ひまな午後をジョーが事務所でまどろんでいると依頼人が現れる。〈若き金髪の神〉30歳になるかならず、長身で少年ぽいハンサムで髪は淡い金髪で濃い金色に日焼けしている。金がかかった服装をしているが態度がすがすがしい。
クリスチャン・ポーフィリはウッドパイン警視に紹介されてきたという。相談に行ったら警察の扱う仕事ではないからジョーのところへ行け、彼はこの仕事にぴったりだといったそうだ。「ええと、現在わたしは非常に忙しくて・・・」とジョーがいうと、「もちろん、あなたがひっぱりだこだということは承知している・・・」と4枚の50ポンド札を置いた。そして明日〈ロイヤル・フー〉で待つという。
ルートンにはクラブは多いが、ジョーは〈ロイヤル・フー〉を知らない。フーというのは〈ドクター・フー〉かというくらいに。

こんな出だしでいくからどんどん先を追って読んでしまう。殺されそうになるし、女性にもてもてだし、私立探偵ものの醍醐味をこれでもかと盛り込んで楽しんでいるヒルさんである。
(羽田詩津子訳 PHP文芸文庫 857円+税)