ジェイムズ・エルロイ『ブラック・ダリア』(2)

元ボクサーのリーとバッキーが警察官になったことで、政治的・社会的な裏がたっぷりある白人警察官どうしの試合が企画される。試合をすることに決めた日にバッキーはリーとケイに出会う。3人のゆるぎない友情の第一歩になった日。ケイはどうしようもない子供たちと言いたげな顔で二人を見ていたが、別れるときにバッキーに一言「その歯をなおしてもらえば、あなた、すごいハンサムなのに」。彼は口を開かないといい男だがすごい出っ歯が邪魔している。

リーとケイは同居しているけど結婚ではなく、リーはなぜかケイとバッキーを結婚させたがっている。リーもケイも暗い過去を背負っている。
ふたりはボクシングで名を挙げてからは警察内での位置もあがり荒っぽさで名を馳せている。あるとき3人の運命を変える事件が起こる。ブラック・ダリアことエリザベス・ショートが惨殺された事件である(1947年に実際に起こった事件で未解決)。ブラック・ダリアは殺された上に肉体を上下に切断されていた。
バッキーは事件にのめりこむ。リーが行方不明になり、月日が経ち、バッキーとケイは結婚する。だがバッキーはブラック・ダリア事件とエリザベスを忘れることができず、事件の聞き込み捜査中に知り合った金持ちの娘と関係し、夫婦関係は破綻する。
やがてバッキーは個人的にエリザベスの出身地へ出かけて、働いていたときの様子などを聞き出す。彼女は優しい女性だったと当時を知る人たちは語る。

時代と金持ち娘の父親が映画「チャイナ・タウン」を思い出させた。

最後にはケイからの手紙に希望が見えてほっと読み終えることができた。
(吉野美恵子訳 文芸春秋 690円)