レジナルド・ヒルの短編『ダルジールの幽霊』

4つの短編小説が集められた「ダルジール警視と四つの謎」を「ダルジールの幽霊」から読んだ。ヨークシャーは11月ですごく寒そう。いまの大阪の寒さを経験しながら読んでいると現実感があってすこぶる楽しい。猫が出てくるし。

ダルジールとパスコーは友人エリオットとジゼル夫妻に頼まれて、彼らが改修した農場の母屋に一夜を過ごすことになった。ジゼルが幽霊がいると怖がっているからだ。ふたりは用意されたサンドイッチとお酒で暖炉の前に座り、ダルジールははじめて警官になったころの事件について語っている。

ひっかくような音を聞いたパスコーが怪しいと言いだす。そこへ電話があってパスコーは署へもどらないといけなくなる。ようやく車を出すと目の前に光るものが・・・それは猫の目だった。ひっかくような音は猫がひっかいていたのだ。母屋を改修するときに猫が住んでいた納屋が取り払われた。猫は果樹園にいたがこう寒くなると外にはいられない。しかも子猫が何匹かいる。パスコーは車を降りて親猫と子猫を抱いて母屋にもどりミルクをやる。
家に入るとダルジールは書斎で金庫から書類を出して調べている。パスコーがなじると、これには理由があり金庫の開け方と道具を用意してきていたが、パスコーがいないときにやろうと署の警官に呼び出し電話を頼んだという。

ダルジールが台所で四つん這いになって猫に子牛のタンのハムを食べさせていたり、パスコーが真夜中に親子の猫を抱いて家に運ぶなどユーモアたっぷりのシーンがあってうれしい短編。(嵯峨静江訳 ハヤカワ文庫 820円+税)