キャロル・オコンネル『愛おしい骨』

キャロル・オコンネルの作品をはじめて読んだのは10年くらい前で、友だちが送ってくれたキャシー・マロリー刑事のシリーズだった。最初の1冊でお腹いっぱいになって、次へ送った記憶がある。それ以来いくら評判が良くても「クリスマスに少女は還る」さえ読む気にならずだった。
いま検索して「このミステリーはすごい」のサイトを見たら本書は2010年の海外編1位だった。なんだかネットで見た気がして検索してみたのだが、わたしは「わたしが好きなものは好き」というタイプなので「このミス」に興味がない。うーん、本書も好きでたまらん作家なら客観的評価は見ないで「ここが好き」とどんどん書いているはず。

カリフォルニア州の北西部と書いてあったのでアメリカ地図を見た。東はネバダ州、北はオレゴン州に接している。本書を読んでいると町の感じがわたしの感覚では南部っぽい。レベッカ・ウェルズ「ヤァヤァ・シスターズの聖なる秘密」を思い出したが、こちらはルイジアナ。ひとびとの雰囲気が似ているような気がする。

その町へ20年ぶりにオーレンがもどってきた。17歳で町を出て陸軍の犯罪捜査部下級准将という地位まで勤め上げたが退職して故郷へもどったのだ。父親のホップス元判事と家政婦のハンナが住んでいる家に着いたオーレンに、ハンナは最近になって弟のジョシュの骨がひとつずつ家にもどってきているという。家政婦ハンナがとても魅力があってしかも謎。
オーレンとジョシュは幼いときに母を亡くしハンナに育てられた。20年前、オーレンとジョシュは森へ行き、帰ったのはオーレンだけで弟は死体で発見された。ジョシュは写真を撮るのが趣味で人を追い回して盗み撮りしたりしていた。

骨の状態を見て埋められていたものと判断したオーレンは保安官事務所に行く。バビット保安官は非公式に捜査に協力するようにいう。いろんな凝った登場人物たちと美女が出てきて飽きない。この町にいるときにオーレンとうまく知り合えなかった鳥類学者のイザベルは幼いときから寄宿学校に入れられ孤独に育った。母のセアラはアルコール中毒である。そのセアラを愛し見守る男。セアラの夫は大舞踏会を開く。そこでタンゴを踊るオーレンとイザベル。
女たちが強い。弱いけど強い。ミステリというよりも土着的な小説と感じた。
(務台夏子訳 創元推理文庫 1200円+税)