エドワード・D・ホック『サイモン・アークの事件簿 III』続き

3冊目は出るかしらと心配したけど、ホックは短編集3巻分の作品を選んであったのだ。じゃあこれで終わりなのかしらと思ったら、続いて「それ以外にも訳者が好む作品があるので、第四巻は訳者が厳選した作品を集めてみるつもりである。」とあった。あと1冊出るのがわかってうれしい。
この短編集のおもしろいところは、1冊目から順に時代が新しくなっているのではなくて1冊ごとに時代順になっていること。だから3冊目の本書も最初のほうの語り手は若い〈わたし〉である。サイモン・アークは二千年も悪魔を追っているだから最初からあんまり変わらない。ずいぶんヘンな設定だけどすんなり受け止めて読めるのがすごい。

昨日紹介した「焼け死んだ魔女」の他に7つの作品が収められている。いずれも悪魔的な匂いのする怪しい事件だがサイモン・アークが合理的に解決する。ある作品の最後のほうに〈わたし〉の言葉がある。「悪魔との関係もなく、魂の取り立て人もなく、不変の三角関係があり、夫の死を望む女がいただけだ」、サイモンは答える「・・・悪魔の仕事を実行する魂の取り立て人だったんだ」。
(木村二郎訳 創元推理文庫 920円+税)