エドワード・D・ホック『サイモン・アークの事件簿 III』

「サイモン・アークの事件簿 I」では、語り手の〈わたし〉は第一作「死者の村」のときは若い新聞記者だった。七十三人の村民すべてが崖から飛び降りて死亡、という事件の村に取材に行き、そこで出会ったシェリーと結婚する。その後、ニューヨークで〈ネプチューン・ブックス〉の編集者になり、編集部長から発行人まで出世して退職している。〈わたし〉は作品毎に年を取っていくがサイモン・アークは相変わらずの姿で〈わたし〉を事件現場に誘う。(ここまでは「サイモン・アークの事件簿 II」に書いたのと同じ)

「サイモン・アークの事件簿 II」を読んでからちょうど1年経った。ふと3冊目は出るんだろうかと思ったことがあったが手にすることができてうれしい。

今回も最初の作品「焼け死んだ魔女」は〈わたし〉がサイモンと最初に出会ってから数年後の話である。
原子力時代が始まって10年以上経ったが、ニューヨーク州ウェストチェスター郡にはまだ占い師のマザー・フォーチューン(運勢の母)の言葉が通用する人たちがたくさんいる。そして彼女のことを魔女と非難する人たちもいる。
今回の事件では、現代の〈魔女〉は数世紀前の魔女裁判の審問官たちに羨望の叫びをあげさせるほどさかんに燃え上がる炎の中で死ぬ。サイモンと〈わたし〉はその事件に係わる。

仕事帰りにニューヨーク発の電車に乗っていた〈わたし〉がハドスンヴィル駅で電車を降りてからサイモンもこの電車に乗っていたと気づき声をかける。「きみはサイモン・アークだろう?」「もちろんだよ。数年ぶりだね」とサイモンは答えるが、電車から降りて〈わたし〉が見つけるのをわかっていたのでしょう。
サイモンはこれからハドスンヴィル女子大学へ行くという。公表されていないが、魔女を自称するマザー・フォーチューンが学生たちにある種の魔法をかけたため、3人の学生は死にそうだし40人ほどが病気にかかっている。それを解明するというのだ。もちろん〈わたし〉は同行する。大学へ行ったふたりは学長に話を聞く。マザー・フォーチューンは50年前に在学していたが喫煙のせいで退学になった。その恨みをはらすという手紙がきている。

魔女というテーマにとらわれて読んでいたら、最後に本当のテーマが現れる。それも最初にふれられていた「原子力時代が始まって10年以上経った」ことに関連があるのに驚いた。エドワード・D・ホックは新しい。
(木村二郎訳 創元推理文庫 920円+税)