「ミステリーズ!」10月号に木村二郎さんの『残酷なチョコレート』

創元推理文庫から発売された2冊「ヴェニスを見て死ね」と「予期せぬ来訪者」について、きのうとおととい感想を書いた。続いて今日は雑誌掲載の新作である。

ニューヨークは昨晩の雪が5インチも積もっている。オフィスで椅子に座っているヴェニスの前に現れたのは35年前にオクラハマ・シティーでつきあっていたメリンダだった。すぐ彼女とわかったことについて「きみは35年前とちっとも変わっていないからだよ」と答えるが、彼女の顔が母親と似てたから(笑)。
ということは今回のヴェニスは55歳を越えている。ずっとニューヨークで仕事してたんだなぁ。「タイガー・タトゥーの女」のときは1995年だから46歳だったのか。それからでも10年経つ。今回、アパートでヴェニスを出迎えたグウェンの言葉やしぐさが長い年月を共にしてきた夫婦って感じがした。ふたりはなぜか結婚はしないで同居している。

メリンダは次女のメレディスが置き手紙をして出て行ったので調べてほしいと頼む。ちなみにふたりの娘はヴェニスの子どもではないという。
長女のメラニーはニューヨークで働いているので連絡して会うと、昔ヴェニスと親しかったグレンと出会ったというので、グレンの家に行くことにする。グレンは酒で仕事をしくじり、いまは夜警をして汚いアパートに住んでいる。そこの階段を6階まで登るのにヴェニスは息切れする。鍵のかかっていないドアを開けるとグレンが銃で撃たれて死んでいた。
ヴェニスの電話でやってきた、マンハッタン・サウス署殺人課のマーク・マクレイン警部補が「おまえが第一発見者か?」と訊ねる。
(「ミステリーズ!」2011年10月号 東京創元社 1200円+税)