マキノ雅弘監督『昭和残侠伝 死んで貰います』

「昭和残侠伝」シリーズの7作目。池部良と高倉健のまなざしやしぐさや声にぞくぞくした。いままで見たなかでいちばん気に入った。
いつもと同じように我慢を重ねたふたりが、最後に刀を手に斬り込むというお定まりのストーリーである。ふたりの間に漂う空気、お互いを思いやって見つめあうところ、そして手を重ねるシーン。そして最後に斬り込んで敵の刀に倒れた風間重吉(池部良)を胸に抱き寄せる花田秀次郎(高倉健)。いつもよりも濃密なふたりのシーンにしびれまくり。

東京深川の由緒ある料亭で生まれた秀次郎は、父が後妻をめとり妹が生まれると家を出て渡世の世界で生きる。まだ若い彼は賭博場でイカサマにひっかかり無一文となり銀杏の木の下でうずくまっていた。そのとき通りがかったいくえ(藤純子)が声をかける。それから何年かして秀次郎はイカサマを暴露して乱闘ののち捕まり服役する。
関東大震災があり料亭が立ち行かなくなるところを板前の重吉が支えている。秀次郎はもどってきて板前の見習いをはじめる。芸者で一本立ちしたいくえが現れる。
深川をシマとしている昔ながらの寺田一家に新興のヤクザの駒井がちょっかいを出して取ろうとしているときに、相場に手を出した妹の婿が駒井から借金して料亭の権利書をとられてしまう。その権利書を取り戻しにお金を持っていった寺田の親分が帰り道で殺される。
いままで我慢を重ねてきた重吉と秀次郎は刀を手に斬り込む。
加藤嘉、荒木道子、中村竹弥など、今は亡き俳優たちが懐かしい。