川端康成『乙女の港』(少女の友コレクション)

これで何度目かわからないが何度も読んだ本。小学校2年のときにはじめて読んだのだが、なぜ覚えているかというと、1年生のときは絵本を読んでいた記憶があるから。2年生くらいから「本」を読み出した。「小公女」「小公子」「家なき子」などおもしろくて、雑誌の読めるところ、理解できるところをどんどん読んでいった。とにかく父と兄姉2人ずつの本があったから、なんでも読んだ。
そのなかでいまもお気に入りが「リンバロストの乙女」「小公女」「あしながおじさん」、吉屋信子の「紅雀」と本書「乙女の港」なのである。
実業之日本社から出ていた「乙女の港」の原著はどこかへいってしまい、長い間もう一度読みたいと思っていたのが20年くらい前に国書刊行会から大型本で出た。わーわー言って買って何度も何度も読んだ。ところが読み飽きたってところもあって欲しがる人にあげてしまった。その後、また読みたくなったときどれだけ後悔したことか。

先日、ツイッターで「少女の友」を出していた実業之日本社から文庫化されたことを知り、昨日買いにいったというわけ。原著と同じ中原淳一の挿絵が入っている。これもうれしい。昨夜と今日と、もう二回読んでしまった。ツイートしてくださった人に感謝。
「少女の友」に1937年6月から38年3月まで連載され、単行本になったのは38年4月。これが昔うちにあった。

横浜のミッションスクールに入学したキュートな大河原三千子と物静かな5年生の洋子との愛の物語なのだが、そこに三千子を追い求める気の強い4年生の克子がからむ。
三千子は母と三人の兄の末っ子で無邪気に育った子。洋子は生まれたときから母が病んで入院しているため母の顔を見たことがない。その上に父の事業がうまくいかず邸宅を手放すという不幸がおそう。洋子は不幸な人生を生きつつ信仰と美を求める。克子は裕福な家の子で気が強くなんでも自分の思い通りにしようとするが、思い通りにいかないことがあるのを知る。
エキゾチックな横浜と避暑地の軽井沢を舞台に繰り広げられる女性三人の愛の物語。
(実業之日本社文庫 762円+税)