大崎善生『聖(さとし)の青春』

わたしの読書範囲にはない本だけど友だちが持っていると聞いて貸してもらった。〈「聖の青春」(2000年・大崎善生著):第13回新潮学芸賞、将棋ペンクラブ大賞を受賞。〉映画にもなって松山ケンイチが村山聖を演じている。

あらゆる勝負事から遠いわたしだが将棋と囲碁には憧れをもっている。子供のときは兄が2人いて家には将棋盤も碁盤もあった。兄たちが少し相手をしてくれようとしたときもあったが、まるでだめだった。なんとなく将棋の駒の文字が好きで並べ方だけは覚えたけど、それだけ。
「ふけばとぶよな将棋の駒を・・・明日は東京にでかけるからに・・・」とお風呂に入ると歌うぐらい好きな歌もある(笑)。

村山聖棋士は広島に生まれ、子供の時にネフローゼにかかって長いこと入院生活を送り、院内学級で過ごした。入院中に父に将棋を教えてもらい熱中し、母に本を買ってきてもらい独習する。10歳で将棋教室に通いアマ四段に認定、中学1年でプロ棋士を目指す。
大阪の森信雄に紹介され弟子入り。病身の村山を親身に世話する森は、寝込んだ村山のために少女漫画雑誌を探して本屋を駆け巡りもした。髪を洗ってやるなど日常の世話、すごい師弟関係である。

29歳で亡くなるまでの将棋に生きた村山聖の人生を描いていて一気に読みきった。
著者 大崎善生さんは元『将棋世界』編集長で東京に出た村山の世話をした。
(角川文庫 640円+税)