イアン・ランキン『最後の音楽』

ジョン・リーバス警部の最後の事件をようやく読み終わった。
リーバスは停年退職が目の前にせまっている。退職の日の9日前、2006年11月15日の深夜、エディンバラ城脇の道路でロシア人が殺されているのが見つかる。見つけた少女と通りかかった中年夫婦が通報し警官が駆けつける。若いグッドイアは気が利いていて制服警官から刑事になりたがっており、シボーン・クラーク主任刑事はこの事件の捜査で使ってみることにする。彼の祖父は犯罪者で兄もぐれているが、彼だけは生真面目な警官になっていた。

被害者はロシアから亡命してきた著名な詩人だった。エディンバラにはロシア人がたくさん訪れており、事件の裏には政治にからむなにかありそうだ。続いてなんでも記録している録音技師が殺される。事件につながりがあるとみたリーバスとシボーンは調査し検討していくと、リーバスの宿敵でギャングから市の上層部にまでつながりを持つまでにのし上がったカファティが関係しているのがわかる。
物語は一日毎の記録になっている。リーバスは深く調べ過ぎて市の上層部から睨まれ、上司から退職の日まで休職処分を受ける。それでもなおシボーンと連絡をとりながら調査を続け推理する。そして退職日までに真犯人を探し出す。だが、罠にはめられてリーバス自身が警察に調べられる身になる。

他の部署の者から「齢を重ねても丸くはならなかった」と言われているとおり、その激しさ、一徹さは変わらない。巧妙な質問ではぐらかそうとする相手をびびらせ、あるときは威嚇して真実に迫っていく。
最後についてすごく語りたいけどやめておく。
(延原泰子訳 ハヤカワミステリ 2100円+税)