金井美恵子『お勝手太平記』

ブログ内検索したら金井美恵子の名前はごく最近のものしか出てこなかった。本棚の奥から出てきた映画の本のこと。そして本書を読みたくなって買いに行ったこと。
映画の本「映画、柔らかい肌」「愉しみはTVの彼方に」がすごくおもしろく勉強になったので、つい新刊が出ているのを知って読みたくなった。
買ってすぐに読み出したらおもしろくてたまらない。しかし、半分くらいまで読むとだんだん自分の世界と離れていることがわかってきて、そうだ、以前にもこの感覚があって、それで金井美恵子の新刊を買うのをやめたんだっけと思い出した。
東京と大阪の違いともいえるし、中産階級意識と貧乏人意識の違いともいえる。中産階級を描いても貴族を描いてもいいんだけど、どっぷり中産階級の中にいると思えるところにひっかかった。つい先だって読んだ川端康成には感じなかったし、イギリスのミステリにも感じなかった感覚。

ツイッターで読んだ書評に、村上春樹批判がおもしろいとあったが、そこはたしかにおもしろかった。わたしの感覚とはちょっと違うが。
わたしがおもしろいと思ったのは少女時代の読み物として、「小公女」と「秘密の花園」を良しとして「赤毛のアン」を批判しているところ。ここには引用しないが、すっきりした考えだと思う。わたしの思うところと近いけど、世代の違いとか読んだときの年齢とかいろいろあると思うのでわたしは言い切れないが。

まあそんなわけで、けっこう手紙好きの登場人物の手書き手紙に笑いを誘われつつ、最後にはもうお腹いっぱいの心境になってしまった。せっかく買ったんだけど。
(文藝春秋 2000円+税)