牧村朝子「百合のリアル」

ツイッターで知ってすぐに購入した本。
わたしは異性愛者であるが「百合」好きである。
小学生のときに川端康成の「乙女の港」で女性同士の愛に目覚めたが、「ひまわり」連載の「歌劇学校」も雰囲気があった。中原淳一の影響も大きかった。
少女ものを卒業した感じで外の世界に目を向けるようになり、男性社会を泳ぎ回るようになっていた。そして男性と結婚していまにいたる。うーん、女性には同志愛のような広い気持ちを持っているけどな。

20年くらい前に当時のヴィク・ファン・クラブ会員のSさんが、秋月こおの「富士見シリーズ」の大ファンだった。あおられて読んで「やおい」がなんなのかわかり、自分もええトシして「やおい」やということがわかった。毎巻買って読んでいて、文庫本になるのが待ちきれず、ついに掲載誌「小説ジュネ」を買っていた。
少女マンガもけっこう読んだ。
眠っていた百合の気分がひそやかに百合好みに育っていった。最近になって川端康成の読み直しをしたら、またまたはまった。「美しさと哀しみと」「女であること」、ああ女性同志の危険な愛の深み。

という文学的な百合好みでしかなかったわたしに、「百合のリアル」はストレートに生きている「百合」を見せてくれた。

牧村さんはフランス人の「妻」とフランスで暮らしている同性愛者の日本人女性である。フランスでは日本ではできない「同性婚」ができる。
本書は一人の先生と四人の若者が率直に語り質問し答えを見いだしていく、その丁寧な一つ一つの疑問と答えとそれぞれの立場からの意見がまっすぐで快い。
【『同性結婚制度が存在しない日本で同性と生きていきたい人になにができるか』と考えることは、広い目で見れば『人生設計の前に法制度が立ちはだかった時、個人になにができるか』を考えることでもあるの。」】
と言って、具体的にできることを提案しているのを感心して読んだ。
(星海社新書(武器としての教養) 820円+税)