ノミ・シラミ(わたしの戦争体験記 34)

髪に櫛を入れて髪の生え際から先まで梳いていく。頭に空気が入って気持ち良い。櫛をしっかり見ると黄色っぽい櫛の節目にシラミがたくさんひっついている。半円形の梳き櫛をおばあちゃんからもらって毎日学校へ持って行った。休み時間に櫛を入れるのが習慣になってしまい、梳いたら点検してシラミがついていたら親指の爪でプチプチと連続殺戮。

春になると暖かいのでシラミは髪から這い出して首筋を降りてくる。シラミは田舎の子にもたかっていたが、われわれ疎開児童の血は新しい味らしくて喜んで吸っていた。下着の縫い目などにひっついていてしつこい。見つけたら悲鳴をあげたのは最初の頃で、慣れたら黙々と両手の親指でつぶしてた。

ノミはその点、飛んで逃げるなど陽気だった。「コーシンチクチクノミガサス」と子供らが叫んだのは、アメリカ空軍の空襲が甲府へまでくるようになったころ。

大阪大空襲のあと母親が弟妹を連れてやってきた。近所の納屋を借りての生活に慣れたころ、ノミシラミの空襲もひどくなった。納屋の壁につってあったゴザなどにも先住の虫たちが住んでいたのだろう。
シラミは大阪でも風呂屋からもらって帰ってナンギしたと姉兄にのちに聞いた。