ベリンダ・バウアー『ラバーネッカー』

明日開かれる〈大阪翻訳ミステリ読書会〉の課題本をようやく読み終った。
ウェールズに住む青年パトリックの物語。読み終ってからベリンダ・バウアーはウェールズの人と知った。はじめて読む作家で名前も初めて知った。

パトリック・フォートはウェールズで生まれ育った18歳。アスペルガー症候群で幼いときから周囲の子どもらとうまくつきあえない。母はそんなわが子の存在に悩みアルコールに依存するようになる。父は息子に穏やかに接して母が酒で荒れているとパトリックをブレコン・ビーコンズ国立公園散歩に連れ出してくれた。
ところが、パトリックが8歳のときに父が車に轢かれて死んでしまう。父は道路で車をよけるために手をつなごうとあせるが、パトリックは手を振り払って後ずさった。車は父を轢いて走り去った。パトリックは死について異常な関心を持つようになる。

人から理解されない苦しい子ども時代ののち、パトリックは障碍者受け入れ枠のおかげでカーディフの大学に入れることになった。他の学生は医師になるために解剖学を勉強するが、パトリックは解剖学だけである。自分がしたいのはここでの作業だけだ。本物の生きている患者のそばに行くなんてぞっとする。

物語は横に広がり病院の脳神経科病棟のベッドに寝たきりの患者たちと看護師の個別の物語になる。
こだわるパトリックは亡くなった患者の死因を追求して、ついに殺人犯人を見つける。
情緒が通じず論理で攻めるパトリック。
(満園真木訳 小学館文庫 830円+税)