ヘニング・マンケル『北京から来た男 上下』(3)

サンは結婚し子どもが生まれ大家族の家長となって周りの人たちから尊敬された。書くことをやめずに膨大な日記を遺した。それから150年経った2006年の中国は毛沢東の時代を経て資本主義の時代となっている。サンの子孫ヤ・ルーの両親は文化大革命で苦労したが、いま姉のホンクィは政府の仕事につき、ヤ・ルーは企業家として成功した。
北京の近代的なビルにあるオフィスで秘書や部下を支配し、自分の出世と金儲けの邪魔になるものを暴力で排除していく。姉だって容赦しない。そしてサンの子孫としてやるべきだと思ったことを、とんでもない手段で実現する。ネヴァダとヘッシューバレンで。

ヘルシングポリの裁判官ビルギッタは、母の養父母がヘッシューバレンで殺された一人であることから事件が気になり、アメリカでの似通った事件のことを警察に話すが無視される。健康チェックで休暇を取らされたので大学時代の友人が中国へ行くのに同行する。

すごい本だった。最初は警察小説かと思って読み進めると、150年前の中国の貧民たちがアメリカへ連れていかれ、アメリカの大陸横断鉄道を敷く仕事に携わる話が延々と続く。スウェーデンで起こったすさまじい大量殺人のもとはここにあった。
150年前の中国から、現代の中国へ話は続く。
女性裁判官ビルギッタが語り部のような存在になっていて読みやすかった。