ヘニング・マンケル『北京から来た男 上下』(2)

1863年の中国、サンと兄グオシーと弟ウーの3人兄弟が海へ向かって広東への長い道のりを歩いている。生まれた村の貧乏小作人の両親のところへ地主の雇い人がやってきて日々の責務を果たしていないと責めた。翌朝、両親は木の枝に首を吊って死んでいた。サンが見つけて降ろして寝かすと、長老のよろよろの老人がいますぐに逃げるように言う。彼らは必死で逃げ出した。3人の中ではサンがいちばんしっかりしている。
とうに食べるものがなく落ちている野菜屑を拾ったりしてしのいだ。犬がついてきたのをついに殺して食べる。町へ出てきても泊まるところがなく道ばたで眠ると、眠っているうちに水を入れている竹筒さえ盗まれる。仕事を探して歩き回るが3人を雇うものはいない。
結局、声をかけてきた男ズィにだまされて船に乗らされる。体調が悪かったウーは殺されて海へ投げ捨てられた。
1863年は何万人もの貧しい中国農民が攫われてアメリカへ連れて行かれた年だった。大きな海を渡っても貧しさはどこまでもついてきた。

アメリカの大陸横断鉄道を敷く仕事に携わった彼らの長い奴隷のような生活が描かれる。睨まれるとニトログリセリンを使って山を壊す危険な仕事ばかりやらされる。そこを逃げ出したこともあったが連れ戻されよけいに厳しい労働を強いられる。サンとグオシーはひたすら生き延びることだけ考えてきたが、とうとう奴隷労働が終る日が来た。
エイクソンという砂金で金持ちになった白人が馬車で東部へ向かうのに料理と洗濯のできるものを探しているのを知り応募する。ようやくニューヨークに着き賃金をもらった。

リバプールからの船客に2人のスウェーデン人がいた。宣教師で中国へキリスト教の布教に行くので中国語を教えてほしいという。途中で兄が亡くなりサンは2人のスウェーデン人とともに広東へもどった。
2人と縁が切れたのち、質素に暮らせば充分のお金を手にしているので、広東で小さな家を借りひっそりと暮らし始める。読書と書くことが彼の生活となった。両親が首をくくってからの日々を詳細に書いていく。

突然、150年前の中国の話になったが、アメリカでの奴隷のような労働と、スウェーデン人が登場して物語がつながる予感がする。